乳業メーカー各社、2016/17年度の業績を発表(NZ)
ニュージーランド(NZ)の乳業メーカー各社は9月下旬、2016/17年度(7月〜翌6月)の通期決算と生産者支払乳価(乳固形分1キログラム当たり、以下同じ。)を、相次いで発表した。国際市況の好転などを受け、売り上げは軒並み前年度を上回るものとなった。
このうち、NZ最大手のフォンテラ社は、集乳量については、年度当初(春先)の多雨による減産が響き、前年度比2.6%減となった(表1)。
一方、売り上げについては、集乳量が減少する中、中国でのチーズや飲用乳に対する高い需要などを反映し、より利益率の高い消費者向け乳製品部門に優先して生乳を仕向けた結果、前年度を上回った。販売量(生乳換算ベース、以下同じ。)については、全粉乳や脱脂粉乳などの原料向け乳製品部門は、前年度比4.9%減の2130万キロリットル相当となった一方、消費者向け乳製品部門は550万キロリットル相当(同12.2%増)とかなり大きく増加した。税引後純利益については前年度を下回ったが、同社は、製造の増加した消費者向け乳製品の製造コストが比較的高かったためとしている。
生産者支払乳価は、国際需給の均衡が続いていることを受け、低水準となった前年度から、大幅な改善がみられた。
同社は、集乳量が減少した中、高い乳価を支払いつつ、負債の削減(630億円→540億円)にも取り組み、一定の利益を確保できたとして、今年度の業績を肯定的にとらえている。
2017/18年度の集乳量については、例年並みまで回復するとみており、今後も引き続き、消費者向け乳製品の製造を強化し、利益の確保に努めたいとしている。また、生産者支払乳価については、乳製品に対する世界的な需要は今後も旺盛であるとして、6.75NZドル(550円:1NZドル=83円)、配当金は同0.45〜0.55NZドル(39〜48円)と見通している。この結果、生産者の手取りは、乳固形分1キログラム当たり7.2〜7.3NZドル(598〜606円)と、前年度比で1割以上増加することとなる。
また、第3位のシェアを有するシンレイ社は、売り上げについては、7億5900万NZドル(630億円、前年度比38.8%増)と過去最高を記録し、税引後純利益についても、3820万NZドル(31億7000万円、同11.0%増)とかなりの程度増加した(表2)。
付加価値の高い育児用調製粉乳に対する高い需要により、同社の育児用調製粉乳の生産量は、前年度から大幅に増加し、1万8776トンとなった。同社は2017/18年度、北島オークランド周辺の生乳処理施設の処理能力を増強し、育児用調製粉乳を年間3万トン以上生産できるようにするとともに、新製品の生産なども進めていきたいとしている。
生産者支払乳価については、2016/17年度は6.3NZドル(529円)であったが、2017/18年度は6.5NZドル(545円)と、ほぼ同じ水準を維持するとしている。
また、集乳シェアは小さいものの、濃縮ホエイパウダー(WPC)や無水乳脂肪(AMF)といった高付加価値乳製品を南島で製造しているタツア社は、主力製品のWPCやAMFの国際価格が、前年度比1.5倍超となるなど好調な市況を反映し、売り上げは3億3500万NZドル(278億円(同15.8%増))、税引後純利益は1億1400万NZドル(94億6000万円(同14.2%増))と、ともに前年度をかなり大きく上回る結果となった。
これに伴い、2016/17年度の生産者支払乳価は7.1NZドル(673円(同12.7%高))となり、他社よりも比較的高い水準であった前年度から、さらに1割以上引き上げられた。
【竹谷 亮佑 平成29年10月4日発】
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