豪州最大の集乳シェアを有する酪農協系乳業メーカーのマレーゴールバン(MG)社は10月27日、かねてから検討していた売却先を、サプート社(本社:カナダ)に決定したと発表した。売却額は13億1000万豪ドル(1160億円、1豪ドル=89円)。MG社に生乳を供給している酪農家については、2018/19年度(7月〜翌6月)以降、向こう5年にわたって集乳が継続される。
サプート社は、世界でも十指に入る巨大な乳業メーカーとされ、豪州では、ワーナンブールチーズ&バター(WCB)社の筆頭株主として知られている。MG社の取締役会は、全会一致でサプート社への売却を決定し、「関係者にとって最良の結果をもたらすと確信している」としている。
今後は、豪州競争・消費者委員会(ACCC)や外国投資審査委員会(FIRB)の承認と、過半数の株主の同意が必要となるなど、まだクリアすべきハードルは残っているが、同社は、2018年上半期に一連の手続きを完了したいとしている。
また、MG社は、今回の決定と併せて、2017/18年度生産者支払乳価について、現時点まで(2017年7月〜10月)生乳を出荷した酪農家に対しては、現行の乳固形分1キログラム当たり5.20豪ドル(462円)から同5.60豪ドル(498円)に引き上げるとともに、年度末まで出荷した酪農家に対しては、さらに同0.40豪ドル(36円)加算し、同6豪ドル(534円)を支払うとしている。乳価引き上げに伴うこれらの追加支出(1億1400万豪ドル(101億円))は、売却額に含まれているため、加算分の支払いについては、売却手続き完了後となる。
MG社は、2016年4月に大幅な営業赤字が判明したことで、異例ともいえる生産者支払乳価の引き下げを行った。それ以降、酪農家の離脱が相次ぎ、2015/16年度に350万キロリットルあった集乳量が、2017/18年度は193万キロリットルまで減少するとの見通しが示されるなど、さらなる経営環境悪化からの立て直しが急務となっていた。
今回の売却をめぐっては、国内乳業メーカー(豪州資本)のベガ社、NZ資本のフォンテラ社、中国資本の伊利、光明など複数の乳業メーカーが、買収の意思を表明していた。しかし、当初最有力候補とされていたベガ社が辞退を表明したことで、動向に注目が集まっていた。
現地専門家によると、中国資本の乳業メーカーの中には、サプート社よりも高い買収額を提示した社もあったものの、中国資本の参入ということでACCCやFIRBによる審査が長引けば、同社の経営環境がさらに悪化し、酪農家への乳代の支払いすら滞る可能性があり、経営陣がこれを避けたかったことが背景にある。
酪農家が生乳供給先をMG社から他社に切り替える動きは、現在もなお続いており、今後、同社の経営を立て直すためには、3〜5年の単位で酪農家との信頼関係の再構築を図り、集乳量の回復を図る必要がある。こうした中、酪農協として存続できない形での売却を一方的に発表したMG社の経営陣に対し、酪農家の不信感は高まっているとされる。