韓国の農林畜産食品部は11月6日、マレーシア向けに乳用牛の凍結精液の輸出を開始すると発表した。同部は、農業協同組合と協力してマレーシア政府と協議を進めてきた。今回の輸出は、マレーシア政府が韓国の乳用牛の改良技術を高く評価したため成立したもので、これは、韓国政府が乳用牛の改良のために、長年にわたり投資を行ってきた結果であるとしている。
11月中に凍結精液1500本を輸出し、5年以内に年間2万本まで輸出を拡大したいと考えているほか、現地での乳用牛の育種改良を技術的に支援する計画もある。韓国政府は、マレーシアにおいて乳用牛の育種改良が進めば、飼養頭数、生乳生産量はともに増加し、同国向けの飼料、動物用医薬品などの輸出が増加することを期待している。
乳用牛の凍結精液が輸出されるのは今回が初めてではなく、2014年にアフリカのウガンダに4000本の凍結精液と牛受精卵の性判別キットが輸出されており、18年には動物用医薬品の輸出を開始する予定である。
マレーシアにおける生乳自給率は極めて低い水準にあり、2015年は7%と、輸入に大きく依存している状態が続いている(図)。この理由として、(1)収益性の高いオイルパームに土地を優先的に利用させる政策を採っているため、酪農生産者は土地的制約から十分な粗飼料を確保できないこと、(2)高泌乳の品種改良を進めているが、亜熱帯性気候に適応した生産性の高い品種の改良が進まないことなどが挙げられる。
政府は、第11次マレーシア計画において、比較的生産性が高いマフリワール種(ホルスタイン種と耐暑性のあるサヒワール種の交雑種)の品種改良および繁殖技術の向上を図るとしており、韓国から輸入した凍結精液はこの計画に基づくものと思われる。