USDAはオーガニック家畜の要件への動物福祉関連項目の追加を断念(米国)
米国農務省(USDA)は12月18日、「オーガニック家畜及び家きんに関する飼養管理基準(Organic Livestock and Poultry Practices: OLPP)」についての最終案を撤回する方針を発表した。
USDAは、オーガニック食品生産法(Organic Foods Production Act)に基づき、既存の全米オーガニックプログラム(NOP)に動物福祉(Animal Welfare)に関連する項目を追加または明確化すべく、2016年4月13日にOLPPの原案を提示した。その後、パブリックコメントの募集を経て、2017年1月19日付けで最終案が公表され、同年3月20日からの施行が予定されていた。
しかし、トランプ新政権が全省庁に対して施行前の規則案の見直しを命じたことから、最終案についても施行が延期され、その取り扱いが検討されてきた。
以下は経緯、最終案の概要、米国関連団体の反応などについて、報道情報などを基にとりまとめたものである。
OLPPをめぐる主な経緯
(1) 2016年4月13日
OLPPの原案が公表され、パブリックコメントを6月13日まで募集
(2) 2017年1月19日
OLPPの最終案とともに同年3月20日を施行日とする旨を公表
(3) 2017年1月20日
トランプ政権が発足し、全省庁に対し施行前の規則案の施行の延期と見直しを指示
(4) 2017年2月9日
(3)を受け、施行日を同年5月19日に延期
(5) 2017年5月10日
施行日を同年11月14日に延期するとともに、USDAが今後取るべき以下の4つの選択肢を示し、
パブリックコメントを6月9日まで募集
a) 2017年11月14日に最終案をこのまま施行する。
b) 施行日を無期限に延期し、その間にUSDAが最終案の施行、修正、取り下げについて検討する。
c) 施行日を2017年11月14日以降にさらに延期する。
d) 最終案を取り下げ、USDAはその施行を追及しない。
(6) 2017年11月14日
(5)のCを採用し、施行日を2018年5月14日まで延期し、USDAは、最終規則案を
公布するに当たっての同省の法的権限や想定されるコストと利益について追加の
パブリックコメントを募集することを公表
(7) 2017年12月18日
USDAは、最終案が同省の法的権限を越えていると結論付け、同案を撤回する方針を公表し、
パブリックコメントを2018年1月17日まで募集
OLPP最終案の主な概要
- NOPに参加している生産者と関連業者は、動物福祉を確保するために、家畜および家きんをどのように取り扱うのかを明確にする。
- 家畜のストレス軽減のため、家畜の物理的改変処理(除角、去勢、デビーキングなど)をいつ・どのように行うのかを明確にし、いくつかの処理方法については禁止する。
- オーガニック鶏について、生産方法と育成段階に応じた屋内・屋外における最大飼養密度を設定する。
- 屋外空間の定義を明確にし、さらにオーガニック家きんの屋外空間に土壌と草木を含めることとする。
- オーガニック家畜を販売・と畜するための輸送に関して新たな規定を加える。
- オーガニック認定と畜施設における家畜の扱いに関して、USDA食品安全検査局(FSIS)の規則適用を明確化して、FSISの検査結果を基にオーガニック関連施行規則を規定する。
- オーガニック鶏についてのみ、屋内空間の飼養密度に関する規定を設定する。その他の家きんについては、飼養密度に関する同様の規定を今後提案する可能性があるが、屋内飼育の要件である屋外への出入口の確保、アンモニア濃度、照明関連などの規定は満たす必要がある。
項目ごとの適用時期は以下の通りとする。
- 施行から1年以内に、採卵鶏の屋外へのアクセスに関する要件と肉用鶏の屋内飼養に関する要件を除く全てを遵守
- 施行から3年以内に、(1)に加え、肉用鶏の屋内飼養に関する要件も遵守
- 施行から5年以内に、(1)、(2)に加え、採卵鶏の屋外へのアクセスに関する要件も遵守
撤回表明に対する関連団体の反応
○ 全米豚肉生産者協議会(NPPC)(支持)
NPPCは、プレスリリースにおいて、パーデュー長官およびトランプ政権に謝意を示すとともに、「連邦政府当局がNOPの下に動物福祉関連の要件を規定することは越権行為である旨については当協議会が指摘していたことである。また、新たな規則が生じさせたであろう煩雑なオーガニック認定プロセスは、既存のまたは新規に始めようとするオーガニック畜産物生産者にとって大きなハードルとなっていただろう。」とコメントしている。
○ オーガニック取引協会(OTA)(不支持)
OTAは、同案に対する初期のパブリックコメントで圧倒的多数が支持していたことから、「USDAの根拠のない今回の挙動は、オーガニック関連ビジネス界や消費者からの満場一致に近い支持を裏切るものである。」とコメントを発表した。また、同協会は連邦裁判所に訴状を既に提出しており、「裁判で優位に立てる自信がある」ともコメントした。
【調査情報部 平成29年12月28日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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