CPTPPに対する畜産業界の反応(カナダ)
包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)は1月23日、参加予定の11カ国による首席交渉官会合の末、署名式を3月8日に開催することが合意された。このことに対し、カナダの畜産業界からは部門により異なる反応が示されている。
輸出に意欲的な牛肉部門と豚肉部門は歓迎の旨を示し、特に対日輸出量が増加する可能性を強調している。一方、供給管理制度の下で国内生産者が手厚く保護されている酪農部門や家きん部門は懸念を示している。各業界の全国団体が発出した声明の要旨は、以下の通りである。
カナダ肉用牛生産者協会(Canadian Cattlemen’s Association)
CPTPPは、カナダの牛肉部門にとって、特に日本市場に関して絶好の機会だ。カナダは、日本にとって豪州、米国、ニュージーランドに次ぐ第4位の牛肉供給国である。このうち、現在では豪州のみが関税面での優遇を受けているが、CPTPPが発効すれば、カナダ産牛肉の対日輸出は、豪州と同様の関税条件となり、2017年7月から冷凍牛肉に課されているセーフガードの現行システムからも適用除外となる。また、米国がこの協定に参加していないことによって、引き続き高い関税が課され続ける米国産よりも優位に立てることは、カナダの牛肉産業にとって大きな意味を持つだろう。
カナダ豚肉協議会(Canadian Pork Council)
CPTPPが合意に達したことを歓迎する。養豚生産者らは、署名式後にカナダ産豚肉が日本やシンガポール、ベトナムおよびマレーシアといった主要な市場に対し、競争力の高い市場アクセスを獲得できると知って安心していることだろう。2016年、カナダは自国を除くCPTPP参加10カ国のうち9カ国に対し、合計38万トン、金額にして14億ドル以上の豚肉を輸出した。同協定の発効に伴うカナダ産豚肉の需要増は、2017年連邦予算で示された750億ドルという農産物輸出額目標の達成に貢献するだろう。
カナダ酪農生産者協会(Dairy Farmers of Canada)
CPTPPの進展を好意的にとらえる部門もあるが、1月23日は酪農産業に携わる22万1000人にとって憂鬱な一日となった。カナダ政府は、第一にEUとの包括的経済貿易協定(CETA)によって、そして今やCPTPPによって、酪農部門を分断しようとしている。また、再交渉の真っただ中にある北米自由貿易協定(NAFTA)もまた、同部門を弱体化させるものである。政府はこうした譲歩を続けることが酪農産業を危機的状況に追い込んでいることを認識すべきだ。
カナダ鶏肉生産者協会(Chicken Farmers of Canada)
鶏肉生産者はCPTPP交渉にて下された決断がもたらす影響に懸念を抱いている。鶏肉の関税割当数量は現在、国内鶏肉生産量の7.5%相当と定められているが、CPTPPではさらに2.1%拡大され、9.6%相当とされる予定だ。これはTPP交渉の際に米国の要求に基づいて設定されたものであるが、米国が離脱したことを考慮に入れるならば、この譲許内容はCPTPPから除外されるべきだ。また、何よりも重要なこととして、政府は2015年10月のTPP合意時に公約した生産支援プログラムなどを実施すべきだ。
カナダ鶏卵生産者協会(Egg Farmers of Canada)
CPTPPへの署名が確実になったことについて鶏卵生産者は落胆している。また、これは地元でとれた新鮮かつ高品質な鶏卵を望む国内消費者にとっても打撃である。同協定が発効すれば、カナダの鶏卵生産者は約2億9100万ダースの鶏卵を生産する権利を失い、さらにこの数量は毎年1900万ダースずつ増加する予定だ。CPTPPがカナダおよび経済全体に対してもたらす機会は理解できるが、米国が離脱する前に合意された譲許内容を履行するインセンティブは少しも無い。当協会は政府に対し、同協定によって生じる悪影響を緩和するよう促している。
【野田 圭介 平成30年2月6日発】
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