米国が課した鉄鋼・アルミニウムの輸入制限に対し、中国が公表した対米追加関税措置のリストに豚肉製品(内臓などの副生物を含む)が含まれていたことについて、米国の豚肉業界は懸念を募らせている。
トランプ米大統領が3月23日、米通商拡大法232条に基づき鉄鋼とアルミニウムの輸入制限を発動したことを受けて、中国商務省は同日、米国産の農畜産物に追加関税を課す措置を公表した。このうち、豚肉製品への追加関税は25%とされたが、同措置の具体的な発効期日などは明らかにされていない。
これを受けて、全米豚肉生産者協議会(National Pork Producers Association:NPPC)は「中国が米国産豚肉に追加関税を課すことにより、米国の豚肉生産者や農村部の経済に大きな影響が生じる可能性がある」と懸念を示すとともに、貿易摩擦が農家や消費者に影響を及ぼさない形で解決されることを期待するとのコメントを発出した。
また、米国食肉輸出連合会(U.S. Meat Export Federation:USMEF)は、価格に左右されやすい中国市場において、今回の追加関税によって米国産豚肉の優位性が損なわれる可能性があるとして、対中豚肉輸出の今後に危機感を強めている。
中国は米国の豚肉製品の主要輸出市場であり、USMEFによると、2017年には30万9284トンの豚肉製品が中国に輸出され、その輸出額は6億6310万米ドルに上った。このため、豚肉製品の輸出先として中国は、数量ベースでは第3位、金額ベースでは第4位の座を占めている。中でも、豚副生物のみを見ると、中国は米国にとって最大の輸出先であり、同年の輸出量は18万1351トン、輸出額では4億2520万米ドルに達し、輸出の3分の1以上を中国が占めた。こうした豚副生物の輸出は、豚販売価格の形成に大きく寄与しており、同年の中国向け豚副生物輸出による恩恵は、米国産豚1頭当たり3.50米ドル以上に相当するとされる。
北米食肉協会(North American Meat Institute:NAMI)は、米国の食肉部門および農業経済の将来的な成長は、中国との堅固な通商関係に依存しているとした上で、貿易紛争の加熱を避けるようトランプ政権に中国政府との建設的な交渉を促すとコメントしている。