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欧州委員会、豚肉の短期的需給見通しを公表(EU)

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 欧州委員会は2018年4月5日、農畜産物の短期的需給見通しを公表した。このうち豚肉の需給見通しの概要について以下のとおり紹介する。

2018年の豚肉供給量は、飼養頭数の増加により増加

 2017年の豚枝肉生産量(EU28カ国)は、前年比0.8%減の2368万トンとなった。
 地域によって傾向が異なっており、EUの西欧諸国(15カ国)の合計は同1.3%減であり、主要生産国の多くが減少となる中でスペインのみが増加(同1.6%増)した。一方、東欧諸国(13カ国)の合計は同1.6%増となり、生産拡大意欲の高いポーランド(同0.6%増)、ルーマニア(同9.1%増)、ハンガリー(同4.6%増)などの主要生産国のほとんどで増加となっている。
 2017年12月の繁殖雌豚の頭数は、前年比1.4%増(同17万4000頭増)とこれまでの2年連続の減少から増加に転じている。スペイン(同6万3000頭増)、ポーランド(同5万頭増)、オランダ(同4万4000頭)、デンマーク(2万4000頭増)など多くの主要豚肉生産国で増加している一方、最大の豚肉生産国であるドイツ(同4500頭減)は、繁殖効率の改善などにより前年に続きわずかに減少している。
 また、肥育豚頭数および子豚頭数は、それぞれ同1.6%増(同150万頭増)、同3.0%増(同120万頭増)となっており、短期的に生産量が増加する可能性を示している。
 欧州委員会は、これらの頭数増加を踏まえつつも、輸出市場での競争の激化により豚価が下落する可能性を考慮し、2018年の豚枝肉生産量を同0.8%増の2388万トン程度と見込んでいる。さらに、2019年については、豚価の低迷が継続すると予想しており、前年比0.4%減の生産量を見込んでいる。
180419海外情報図1

供給量の増加により、輸出量も増加

 2017年の豚肉輸出量(EU28カ国)は、前年比9.1%減の259万トンとなった。主要な輸出先である日本、韓国、フィリピン、米国向けなどが増加したが、最大の輸出先である中国向けが3割以上減少した。なお、輸出総額では、平均単価が前年に比べ高かったため、記録的な輸出量であった前年と比べわずか2%減でとどまった。
 また、中国向けが占める割合は、2016年の38%から2017年は28%へ低下した。これは、中国からの需要低迷のみならず、新規市場の開拓や既存市場での輸出拡大など各国がある程度柔軟に戦略的に対応していることを表している。なお、中国については、2015年以降、より厳しい環境政策を実施するなど養豚業の再編および近代化を行うとしていることから、同国の豚肉輸入量は、2016年半ばをピークにして、それ以降は減少しており、2018年も大きく変動しないとみている。
 2018年の輸出量は、米国やカナダをはじめとした主要豚肉輸出国が生産量を増加させると予想されているものの、EUでも供給量の増加が予測されていることから前年比2.5%増と見込まれている。
 なお、2017年の豚肉輸入量(EU28カ国)は、輸出量と比べわずかだが、前年比16.6%増の1万4000トンとなった。2018年の輸入量は、2017年9月に暫定適用となったカナダとの包括的経済貿易協定(CETA)などにより、前年比7.0%増と増加が見込まれている。
180419海外情報図2

豚価は供給増、輸出競争により下落傾向

 豚枝肉卸売価格(EU28カ国)は、2016年半ばから、中国需要を最大の要因として上昇傾向が継続し、高水準で推移した。しかし、2017年後半には、季節的な要因に中国向け輸出の停滞による影響から、やや下落傾向となった。
 2018年の同価格は、域内供給量の増加に加え、主要豚肉輸出国の生産量も増加傾向とみられており、輸出競争の激化が予測されることから、低迷すると見込まれている。

アフリカ豚コレラの脅威下にあるEU養豚界

 複数のEU加盟国でアフリカ豚コレラ(ASF)が発生しており、現在、EUの養豚業界、中でも豚肉輸出業界にとって最大の脅威となっている。2017年には、エストニア、リトアニア、ラトビア、ルーマニア、チェコ、ポーランドでASFの発生が報告され、それぞれ拡大を防止するための対策に追われた。EU養豚業界では、ASF未発生国へ感染拡大する可能性などに対する懸念が続いている。
【調査情報部 平成30年4月19日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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