好調な生乳生産の陰で生乳の受入中止が発生(米国)
米国農務省経済調査局(USDA/ERS)は2018年5月16日、米国の畜産物および乳製品の需給状況に関する報告書「Livestock, Dairy, and Poultry Outlook」を公表した。
この報告書によると、2018年第1四半期(1〜3月)の生乳生産量は、乳牛飼養頭数および1頭当たり乳量がともに増加したことから、前年同期比1.5%増の544億ポンド(2467万5000トン)と、第1四半期としては過去最高を記録した(図1)。
一方、同四半期の牛乳・乳製品消費量(生乳換算)は、全脂牛乳を除く飲用乳で減少傾向にあるものの、同1.2%増の501億ポンド(2272万5000トン)とわずかに増加した。また、輸出量(生乳換算)も、中国や日本向けのチーズ輸出が好調だったことなどから、同14.3%増の24億ポンド(108万9000トン)と大きく増加した。
しかしながら、生乳生産量の増加が、輸出量と消費量の増加を上回っていることから、牛乳・乳製品の在庫量は増加傾向で推移しており、同四半期末時点の在庫量(生乳換算)は、同2.5%増の164億ポンド(743万9000トン)と、かなり高い水準に積み上がっている(図2)。
このような状況の中、現地報道では、乳業メーカーが取引している酪農家からの生乳の買い入れを一方的に終了する動きについて報じている。
報道によると、米国の売上高第2位の乳業メーカーであるディーン・フーズ社は、2018年5月末をもってインディアナ州やテネシー州など計8州に所在する100以上の酪農家に対し、2018年2月26日付けで生乳取引契約を終了すると通知した。契約終了の理由について同社は、堅調な生乳生産に反して飲用乳の消費が減少していることに加え、飲用乳の販売先であった量販店で自社工場が稼働し始めたことを挙げたとされている。
また、別の報道によると、欧州に多くの組合員を抱えるアーラ・フーズ社は、ウィスコンシン州に同社が所有するチーズ工場へ生乳を販売している酪農家のうち11戸に対して、4月30日付けで生乳取引を60日以内(7月1日まで)に終了する旨を通知した。同社は、必要以上の生乳が同工場へ供給されていることを主な理由としており、今後も同工場の生産規模は縮小しない予定としている。
今回取引が中止となった酪農家の新たな販売先について、今後の動向が注目される。
【渡辺 陽介 平成30年5月25日発】
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