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糖類を含む飲料に対する規制強化の動き(英国)

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最終更新日:2018年5月31日

 英国公衆衛生庁(Public Health England、以下「PHE」)は2018年4月、糖類を含む飲料に対する課税を開始した。対象となるのは、100ミリリットル当たり5グラム以上の糖類(スクロース、グルコース、フラクトース、ラクトース、ガラクトース)を含む飲料で、課税額は表1の通り。
 なお、動物性ミルク(発酵乳、ホエーを含む)を75%以上含むものや、植物性の代替ミルク(大豆や大麦、麻などから作られるもの)、果汁100%ジュース、育児用調製粉乳など粉末で取引されるものは、課税対象外となる。
表1 課税額
 こうした課税導入の背景には、児童の肥満増加を食い止めたいという意図がある。PHEは2016年8月、”Childhood Obesity: a Plan for Action”と題した報告書を著した。同報告書には、2020年までに食品の糖類含有率を2015年比20%削減することや、今回実施された糖類を含む飲料への課税など、児童の健康増進を目的とした各種プログラムの実施について記されている。
 また、PHEは2018年5月22日、このプログラムの初年度の実績についてレビューを発表した。それによると、糖類やカロリーの含有量については、全体で2%の削減につながった(品目によっては5%以上の削減に成功した)。糖類を含む飲料については、この調査時点では課税実施前ではあったものの、100ミリリットル当たり糖類含有量は11%の削減、カロリーについても6%の削減に成功した上、100ミリリットル当たり糖類含有量が5グラム未満(課税対象外)のアイテムを選ぶ消費者が増えてきたとしている。
 さらにPHEは、レビューの発表と併せて、糖類を含む飲料に加え、課税対象外となっている乳飲料や植物性の代替ミルクについて、2021年に向けた糖類含有率とカロリーの具体的な削減目標を示した(表2)。
 
表2 削減目標
 PHEによると、4歳〜18歳の子供の1日当たり糖類摂取量は、PHEが定める基準の2倍以上に達している。その結果、小学生の3割以上が太りすぎや肥満の状態にあり、虫歯も増加しているという。PHEは、児童の糖類摂取形態のうち、比較的大きなシェアを占める、ジュースなどの飲料に対し、糖類含有率の規制を設けることで、児童の健康増進を図るものとみられる。
 カロリーについては、飲料の糖類含有率を減らしても、摂取量自体が増加してしまえば意味がないとの懸念から、1容器当たりの摂取上限という形で削減目標が設けられたものとみられる。同様の規制は、アイスクリームやヨーグルトといった他の乳製品ですでに導入実績があり、糖類摂取量の減少を達成している。
 今後、飲料メーカーは、糖類含有量を下げる、カロリーの低い代替甘味料を用いる、あるいは、販売容量を減らすなどの対応を迫られることになるものとみられる。

【参考】EUにおける「糖類を含む飲料」への課税の動向

 欧州委員会や関係団体は2016年2月、2020年までに食品に添加される糖類を2015年比で最低10%削減する目標を採択した。EU諸国では近年、ハンガリーやフィンランド、フランス、ベルギーなど多くの国で、糖類を含む飲料などに対する課税が相次いで導入されている。
 これに対し、欧州清涼飲料水協会は、糖類を含む飲料などに対する課税は健康増進に向けた根本的な解決となっていないうえ、経済にも打撃をもたらすとして、こうした動きを非難する声明を発表している。
 
【平成30年 7月 12日 調査情報部 竹谷 亮佑】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4389