ブラジル政府、中国の砂糖の追加関税をめぐりWTOへ提訴する方針(ブラジル)
最終更新日:2018年9月6日
ブラジル政府は8月31日、中国が措置する砂糖の追加関税に関して、世界貿易機関(WTO)に2国間協議を要請すると発表した。2国間協議は、WTOが定める紛争解決の最初の手続きで、提訴された国は10日以内に回答し、30日以内に協議を始めなければならない。60日以内に解決できなかった場合、提訴した国は専門家によって審理する紛争解決小委員会(パネル)の設置を求めることができる。WTOが定めるルールに反していると認定されれば、提訴された国は是正する義務を負う。
中国は、経済成長とともに砂糖の需要が拡大基調にあるにもかかわらず、安価な輸入品に押され、国内の砂糖生産が伸び悩んでいた。こうした状況に鑑み、中国政府は2017年5月、輸入品が国内産業に損害を及ぼしているとして、海外から輸入される関税割当外(税率50%)の砂糖に対し、最高45%の関税を上乗せする措置を発動した(注1)。
ブラジルにとって中国は、最大の砂糖輸出相手国で、近年その額が年間10億ドル(約1120億円)(注2)近くに達していたが(図)、関税が引き上げられた影響で、中国向け輸出は前年と比べ約90%も減少した。このため、ブラジル政府は、関税引き上げにより生じた貿易収支の不均衡を緩和する代替措置を求めて中国政府と事務レベルでの折衝を幾度となく重ね、今年7月に行われたBRICS(注3)首脳会議の際には、ブラジルのミシェル・テメル大統領が中国の習近平国家主席と直接話し合う機会を設けるなど対話による解決を目指してきた。しかし、双方の折り合いがつかず、これ以上の進展は見込めないと判断し、WTOへ提訴する方針を決定した。
(注1)この措置は3年間継続される予定だが、当初45%に設定されていた追加関税率が2018年5月から40%に引き下げられた。
(注2)為替換算に当たっては、1米ドル=112円(2018年8月末時点)とした。
(注3)ブラジル(Brazil)、ロシア(Russia)、インド(India)、中国(China)、南アフリカ(South Africa) の5カ国の頭文字に由来。
今回のブラジル政府の決定を受け、ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)(注4)は声明を発表し、「われわれ(砂糖・エタノール産業)のこれまでの要請運動が実を結んだ形となった。また、市場をわい曲化させるような慣行の排除を目指す政府の姿勢を世界に示した」と評価するとともに、「パネルが設置される前の段階(2国間協議)で問題が解決することを願っている」と付け加えた。
(注4)ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める中南部地域を区域としている団体。
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