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発酵乳、チーズ、バターの市場規模が継続拡大(韓国)

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 韓国農林畜産食品部と農林水産食品流通公社は8月29日、発酵乳、チーズ、バターの市場分析結果を発表した。
 これによると、2016年の牛乳・乳製品の国内小売市場規模は2年連続で8兆ウォン(8000億円:1ウォン=0.10円)に達し、拡大を続けている。韓国の牛乳・乳製品市場は飲用乳が主体であるが、子供の数の減少による学校給食での消費減や豆乳などの代替飲料が充実してきたため飲用乳の消費量が減少傾向にあり、ここ数年の消費量は伸び悩んでいる。一方で、ヨーグルトやチーズなどが新たな需要を創出することで市場規模の拡大を後押ししている。
 以下に品目ごとの概要を報告する。
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1 発酵乳

 発酵乳の国内生産量は50万トン台後半で推移しており、2016年に一部の乳業会社が発酵乳の生産を中止したため減少したものの、2017年は56万トン(前年比7.8%増)と増加した。牛乳・乳製品の生産量全体の23.9%を占める。
 発酵乳の国内小売販売額は3年連続で増加した。生産量の大きな増加はないものの、日本と同様に機能性を強化した高級路線の製品が増加してきているため、平均単価が上昇し販売額は増加した。全てのタイプで販売額は増加しているが、ドリンクタイプと固形タイプで9割弱を占めている。液状タイプは、米国や豪州に輸出されている。
 韓国では、発酵乳は子供のおやつとして飲食されており、5歳未満の幼児による消費が最も多い。成人の場合は、健康のために食べる乳製品として位置付けられており、他の乳製品と比べ幅広い年齢層に消費されている。2017年の発酵乳の1人当たり年間消費量は10.8キログラムとなっており、ここ数年大きな消費量の伸びはない。
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2 チーズ

 チーズの国内生産量は、ナチュラルチーズの生産量は減少しているものの、プロセスチーズの生産量が急増していることから、年平均で12%増加している。韓国では、ソウル牛乳などの大手乳業が国産ナチュラルチーズを少量生産するとともに、輸入ナチュラルチーズを原料としてプロセスチーズを生産している。日本とは異なり、国産チーズと輸入チーズの抱合せ制度(注)がないため、国産プロセスチーズの原料はほとんどが安価な輸入ナチュラルチーズとなっている。また、最近は、直接消費用のナチュラルチーズの輸入が増加している。2011年以降、EU、米国、豪州、ニュージーランドと相次いで締結したFTAにより無関税枠が拡大したことから、チーズの輸入量が増加し、乳製品輸入量全体の7割弱を占めるまでに至った。2017年のチーズの輸入額は5億4000万米ドル(604億8000万円:1米ドル=112円)となっており、このうち米国が39.0%を占める。
 チーズの国内小売販売額は年平均で3.5%増加しており、プレミアムナチュラルチーズなど高級路線の製品の消費量が増加しているため、市場全体の規模が拡大している。
 消費が伸び悩む牛乳に対し、チーズは、ピザの普及など食の多様化や、辛さを中和させ旨みを加える補完食材として韓国料理に広く使われるようになってきている。幼児や青少年が主な消費層ではあるが、最近は、ビールやワインのおつまみとして成人にも消費されるようになってきており、2017年のチーズの1人当たり年間消費量は2.5キログラム(前年比13.6%増)となっている。

(注)「抱合せ制度」とは、プロセスチーズ原料用のナチュラルチーズを輸入する際に国産ナチュラルチーズを引き取る場合は、無税での輸入を認める制度である。
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3 バター

 韓国の牛乳・乳製品の生産は、先のとおり主に飲用乳向けとなっており、バターなどの乳製品の生産は余乳処理が中心となることから、バターの生産量は年や月によって大きく変動する。一方で、FTAによる無関税枠の拡大によりバターの輸入が増加しており、2017年の輸入量は9432トンとなっている。このうちニュージーランドが4割、フランスおよび豪州が2割弱と、この3カ国で7割を占めている。
 バターの85%は業務用に仕向けられており、それらは製パン業者や食品製造業者などで使用されており、市場規模は小さいものの、毎年堅調に拡大している。
 2017年のバターの1人当たり年間消費量は0.223キログラム(前年並)となっており、男性より女性の消費量の方が高く、特に19〜29歳の女性が主な消費層となっている。
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【青沼悠平 平成30年9月6日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:青沼悠平)
Tel:03-3583-4396