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牛乳・乳製品輸入業者に対するパートナーシップ協定の廃止も農業省は要求を継続か(インドネシア)

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 インドネシア農業省(以下「MOA」という)は、2018年7月30日付けインドネシア農業大臣規程NO33号において、「生乳の供給と流通に関する規程」の一部改正を行った。
 これまで同規程において、牛乳・乳製品の輸入業者および加工業者は、インドネシアの酪農・乳業に関係する現地法人とパートナーシップ協定を締結し、国産生乳の調達、インドネシア市場における牛乳・乳製品の消費拡大のための活動資金の提供、これに加えて、3年以内に国産生乳のみを使用した牛乳・乳製品加工工場の開設などが求められていたが、今回の一部改正によりそうした条項や文言は削除された。また、輸入業者などは、MOA家畜・動物健康総局にパートナーシップ協定書を提出し、四半期ごとに集乳量を報告しなければならず、これらに違反した場合は、違反発覚から起算して1年間牛乳・乳製品の輸入許可書が発行されないという制裁措置も削除された。
 米国農務省(USDA)によると、これまでに88の牛乳・乳製品輸入業者などが30の現地法人とパートナーシップ協定を締結し、インドネシア国内の酪農・乳業の発展に貢献してきたとしている。今後は、輸入許可書を発行する際の判断材料として、パートナーシップ協定を行っているか否かは考慮されなくなる。

 インドネシアは、亜熱帯地域に属しており標高の高い地域を除いて酪農を営むには難しい環境にあるが、政府は、食料安全保障や国民の栄養改善の観点から牛乳・乳製品を重要な品目に位置づけており、輸入依存度を低下させることに強い関心を持っている。しかし、現状は、牛乳・乳製品消費量(生乳換算)の7割程度が輸入原料または輸入製品とみられている。政府は、このような状況を改善するため牛乳・乳製品の自給率向上プログラムにより、2020年までに自給率を50%に向上させる計画を掲げ国産生乳の増産に力をいれており、パートナーシップ協定などもこうした取り組みの一環として行われていた。実際に、国産生乳の生産量は2013年以降増加しており、2017年は92万トン(2013年比16.9%)となったが(図)、依然として自給率は3割程度の低水準で推移している。
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 USDAによると、MOAは、今回の一部改正に対する国内の酪農・乳業団体からの批判を回避するため、牛乳・乳製品輸入業者などに対し、引き続き国産生乳の購入および牛乳・乳製品の消費拡大に対する資金提供を要求してくるのではないかとしている。
 現地報道もパートナーシップ協定に関する義務は廃止されたものの、輸入業者は、これまでの経験則からMOAが牛乳・乳製品の輸入許可書を付与するための条件として、国内の酪農・乳業に対する種々の援助を要求してくるのではないかと懸念しているとしている。
【青沼悠平 平成30年9月13日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:青沼悠平)
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