2018年産のドイツのでん粉原料用ばれいしょの単収は、前年度比27.5%減の1ヘクタール当たり36,426キログラムと予測されている。これは5年平均と比べても16.1%低い。欧州全体でみると、ノルウェーやデンマークでは農業用水の取水制限などの影響で、生産量が4分の1まで落ち込むことも懸念されている。
ドイツの大手のでん粉製造会社であるAVEBE社
(注1)はでん粉原料用ばれいしょ生産農家に対して支払う概算払い額を1トン当たり67ユーロとすることを決めた。通常、でん粉原料用ばれいしょに対しての支払いは輸送費など含めて、複数回に分けて行われるが、今年度の前払金は昨年度よりも大幅な増額となった。これは、今年の欧州の干ばつや高温により、でん粉原料用ばれいしょ生産者も多大な被害を受け減産が予想されることから、でん粉用ばれいしょへの生産意欲を減退させないためには、早めの対応が必要と判断されたためである。AVEBE社は8月下旬から操業を開始しているが、原料価格の高騰によって、生産コストも上昇している。同社も深刻な影響は避けられないが、全生産者に対して偏りなく対応することなどにより、将来的に業績を回復させるべく検討している。
なお、でん粉用ばれいしょに限らず、欧州委員会は域内の生産者に対して、干ばつへの対応のため、例年12月に実施される直接支払い
(注2)を10月半ばに前倒しすることとしている。これにより、生産者の来年度以降の生産にも関わってくる資金繰りの改善にもつながるものとみられる。
注1:本拠地をオランダに置く国際的な協同組合のAVABEグループに属しており、世界最大のばれいしょでん粉企業である。ドイツにも工場を有し、同社が所有する工場は、原料となるでん粉原料用ばれいしょ生産農家によって組織された協同組合が運営に携わっており、生産農家は原料供給者であると共に、でん粉製造工場の共同運営者とも言える立場にある。
注2:EUにおいて加盟国28カ国で共通して講じられている共通農業政策(CAP:Common Agricultural Policy)に基づき、農業者の収入の保障のため、過去の支払い実績に基づいて支払い額を決めるという、品目によらない単一直接支払いを実施。ただし、加盟国によっては2020年まで決められた単価をもとに生産量に応じて補助金が直接農家に支払われる制度(カップル支払い)を維持している場合もある。
参考
干ばつによるでん粉用ばれいしょ供給がひっ迫(ドイツ)
干ばつによるばれいしょの不作によりでん粉生産コストが上昇(ドイツ)
【岡 千晴 平成30年10月5日発】