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EU農業生産者団体、農業者の世代交代のための政策見直しを要求

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 EU最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa-Cogeca(注))は、EU農業の今後の課題について議論が行われる欧州農業者会議(10月10日から12日までオーストリアのリンツで開催)の中で、EUの共通農業政策(Common Agricultural Policy:CAP)における農業者の世代交代のための政策の見直しを要求した。

(注):Copa-Cogecaとは、欧州諸国の農業生産者によって構成されるCopa(欧州農業組織委員会)と、EU加盟国の農業共同組合により構成されるCogeca(欧州農業協同組合委員会)により組織された農業生産者団体である。CopaとCogecaは、独立した組織であるものの、両者は共同で事務局を設置し、主にロビー活動を行っている。

 同団体は、同会議の会期中である11日にプレスリリースを行い、その中で、現在、EU農業者のうち40歳未満の者がわずか11%となっていることなどから、見直し中の次期CAPにおいて、次世代の若手農業者に対する投資などが重要な検討課題の一つであるとした。
 また、それによる世代交代が必要であり、EUおよび加盟国レベルで、若手農業者が農村地域に留まるよう現政策の見直しを求めた。国際貿易や気候変動など農業に重大な影響を与える外的要因があるものの、農業者はそれらの解決策の一翼を担うことができるとし、社会が望むような農業を提供するために、政策による支援と主導が必要だと強調した。
 
 同プレスリリースの中でCopaのルックウィード会長は、「我々は、農村地域を、人間の面からも環境の面からもこれ以上砂漠化することはできない。人間と環境は、消費者と農村地域の両方の存続を維持するものである」とし、Cogecaのマグナスン会長は、「世代交代の促進を優先させる必要がある。若手農業者に対する長期的な支援は、CAPの中で行われる必要がある」とした。
 
 同会議ではその他、現在見直しがされている次期CAPについて、直接支払いや農村開発予算が削減されることなく、安定したものとなるよう要求があった。
 
 また、同会議で基調講演を行った欧州委員会のホーガン農業・農村開発担当委員は、EUが主導する自由貿易協定により、EUの農産物、食品の輸出は拡大しており、それにより同分野に約2万人の新たな雇用を生んでいるとした。さらに、次期CAPの見直しにより、若手農業者に対する直接支払いの重点化や施設整備の最大補助額の増額が検討されているとした。

 なお、次の欧州農業者会議は、2020年10月にクロアチアで開催される予定である。
【調査情報部 平成30年10月23日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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