世界貿易機関(WTO)は10月22日、中国政府による砂糖への追加関税措置をめぐり、ブラジル政府が提訴する手続きに入ったと発表した。両国は、まずWTOが定める2国間協議での解決を目指す。
これに先立ち、中国商務省の報道官は同月17日、8月末にブラジル政府がWTOに提訴する方針を固めたことを受け、「輸入する砂糖に課している追加関税は、WTOのルール上認められているセーフガード措置である」との認識を改めて示し、「ブラジル政府から2国間協議の要請があった場合、誠実に対応する」と述べていた。
WTOの発表によると、ブラジル政府は「セーフガード措置は、国内産業に重大な損害を及ぼしかねないような突発的な輸入の急増に対抗するための一時的な手段として認められている」との見解を示した上で、「中国が現在抱える砂糖産業の低迷は輸入の増加によって引き起こされたものではない」と指摘した。また、中国が実施する非関税措置が不当だと主張している。具体的には、本来関税を支払えば無制限で輸出できるはずの関税割当外の砂糖について、輸入業者に発給される『自動輸入許可証』
(注)を意図的に取り消したり、効力を停止したりするなどして実質的に輸入量を制限したとしている。
中国政府は8月以降、追加関税措置について対象となる国を限定しない運用に切り替えるなどブラジルに一定の配慮を示していた。しかし、それ以降も中国が輸入する砂糖の輸入量にあまり変化が見られなかったことにブラジル政府は業を煮やし、提訴に踏み切ったとみられる。
(注)自動輸入許可証の取得が必要とされる物品は、政府が告示したものに限られ、農産品では砂糖、牛肉、豚肉、粉ミルク、大豆、植物油などが対象。輸入業者などが対象となる物品を輸入する場合、中国商務省や通関業務の権限が委任された機関に自動輸入許可証の申請を行うと、10営業日以内に無条件で輸入許可が下りる仕組み。国民の生活に不可欠な物品の通関手続きを迅速かつ円滑に処理することのほか、輸入状況を監視することなどを目的に運用されている。
(参考)ブラジル政府、中国の砂糖の追加関税をめぐりWTOへ提訴する方針(ブラジル)
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002279.html