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酪農業界、さらなる損失補償を政府に要請(米国)

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 全米生乳生産者連盟(NMPF)は10月23日、他国の報復関税によって米国酪農産業が被る損失に対し、一層の補償を要請する旨の書簡をパーデュー米農務長官宛てに発出した。
 
 米国農務省(USDA)が8月末に公表した損失補償プログラムの概要によれば、米国政府が酪農生産者に対して実施する直接支払いは2回に分けて実施され、うち1回目の支払い見込み額は1億2740万米ドル(146億5100万円:1米ドル=115円)と予定されている。しかし、NMPFが実施した最新の影響試算によれば、酪農産業が2018年下半期(7〜12月)に被る損失は15億米ドル(1725億円)に達すると見込まれており、書簡の中でランディ・ムーニーNMPF会頭はUSDAの補償水準は十分ではないと訴えた。
 また、書簡では複数の民間調査会社による影響試算の結果にも触れ、いずれの試算においても米国の酪農産業が2018年に被る損失は10億米ドル(1150億円)を超過することを明らかにした。なお、USDAが10月17日に公表した畜産物需給見通しでも、今後の乳価は例年と比べ低い水準で推移すると見込まれており、米国の酪農生産者は引き続き厳しい経営を強いられる可能性が高いとみられる(図)。
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 ムーニー会頭は書簡の末尾において、酪農産業を支えようとする大統領の意思に謝意を表しつつ、今年中に行われる2回目の直接支払いについては、報復関税によって全米の酪農生産者が直面している苦境をより反映したものにするよう、政府と共に取り組んでいきたいとの意欲を示した。

 現地報道の中には、先日合意に至った米国-メキシコ-カナダ協定(USMCA)から得られる恩恵は、酪農生産者が被っている損失を補填するにはあまりにも小さく、酪農業界は2回目の直接支払いでより多額の補償を受けることを望んでいるとの見方もある。
【野田 圭介 平成30年10月26日発】
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