穀物の生産見通しを発表(豪州)
豪州農業資源経済科学局(ABARES)は12月3日、2018/19年度(7月〜翌6月)冬作物および2018/19年度夏作物の生産予測の見直しを行った(注)。
(注)豪州の冬作物は、3月〜6月に播種、10月〜翌年1月に収穫を行う。夏作物は、10月〜翌年1月に播種、3月〜6月に収穫を行う。また、本発表の段階では、2018/19年度冬作物の収穫期であり、2018/19年度夏作物の播種期である(図)。
【冬作物】生産量、干ばつにより大幅下方修正
冬作物については、作付面積は、クイーンズランド(QLD)州、ニューサウスウェールズ(NSW)州およびビクトリア(VIC)州の東部3州における干ばつにより、前回予測時(2018年9月)から181万ヘクタール下方修正し、1773万4000ヘクタール(前年度比19.8%減)と大幅な減少を見込んでいる(表1)。生産量は、作付面積の減少および単収の低下により前回から396万トン下方修正し、2926万8000トン(同22.9%減)と大幅な減少を見込んでいる。干ばつによる生育不良に加え、粗飼料価格が高いことから、穀物収穫前に乾草などの粗飼料向けに刈り取ってしまう生産者が多いことが、さらなる生産量の減少につながっているとしている。
地域別にみると、VIC州の生産量は前年度比51.1%減、NSW州は同56.6%減およびQLD州は同45.2%減と、東部3州はいずれも大幅に減少しており、特に干ばつの影響が大きいNSW州は、2016/17年度には西オーストラリア(WA)州に次ぐ生産量であったが、2018/19年度は313万7000トンと、2016/17年度の2割程度にまで減少すると見込んでいる(表2)。一方、最大の生産地であるWA州は、良好な降雨に恵まれたことから、前年度比11.3%増と唯一増加を見込んでおり、同州が全体の生産量に占める割合は、2016/17年度の31%から、2018/19年度は56%と大幅に増加する見込みである。
主要品目別に見ると、小麦は、WA州では単収の増加が見込まれるものの、そのほかの地域では作付面積の減少に加え、単収の減少が見込まれるため、生産量は1695万6000トン(同20.2%減)と大幅に減少し、11年ぶりに2000万トンを下回ると見込んでいる。大麦については、WA州および南オーストラリア州では作付面積がわずかに増加することから、小麦に比べて作付面積の減少幅は少ないものの、単収が大幅に減少することから、731万2000トン(同18.1%減)と大幅な減少を見込んでいる。
【夏作物】生産量、ソルガムは増加も、全体では大幅減
夏作物については、作付面積は、ソルガムは取引価格の上昇により増加する一方、綿実および米は干ばつによるかんがい用水の取得に係るコストの増加により大幅に減少することから、109万8000ヘクタール(前年度比17.8%減)と、大幅な減少を見込んでいる。生産量は、作付面積の減少および単収の減少により、309万8000トン(同24.5%減)と大幅な減少を見込んでいる(表3)。
品目別作付面積第1位のソルガムについては、飼料向け需要の増加により取引価格が上昇していることに加え、播種期にさしかかる9および10月に一定の降雨があったことから、作付面積は57万2000ヘクタール(同7.7%増)、生産量は152万4000トン(同5.9%増)と、かなり増加すると見込んでいる。
一方、品目別作付面積で第2位の綿実については、QLD州およびNSW州の干ばつによりダムの貯水率が大幅に低下していることから、かんがいを利用する地域の作付面積が大幅に減少するため、綿実全体の作付面積は28万ヘクタール(同44.0%減)と半分近く減少し、生産量は82万2000トン(同41.9%減)と大幅な減少を見込んでいる。
また、綿実同様、かんがいを利用する米についても、作付面積は1万5000ヘクタール(同75.0%減)、生産量は15万6000トン(同75.2%減)と大幅な減少を見込んでいる。
【大塚 健太郎 平成30年12月7日発】
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