欧州委員会は11月22日、欧州連合(EU)における植物たんぱく質の発展に関する報告書を採択し、公表した。
本報告書は、EUにおいて需要の高まっている、大豆やレンズマメなどの豆類やナタネ、ヒマワリといった植物性たんぱく質について、その需給状況を分析し、経済的、環境的に健全な生産方法でさらに発展させる可能性について報告している。
欧州委員会のフィル・ホーガン農業・農村開発担当欧州委員はプレスリリースの中で、「植物性たんぱく質は、世界最高水準の食品・飲料を生産するEU農産物分野において必要不可欠な要素である。しかし、EUの生産量は不十分である。将来に向けた持続可能な道筋を描くことは、欧州委員会だけではできず、全ての利害関係者による積極的な働きかけが必要となる。この報告書は、欧州全体でこうした道筋について議論する上で重要な参考になるだろう」と述べている。
同報告書によると、近年のEUにおける植物性たんぱく質需要は高まっており、2016/2017年度(7月〜6月)の需要は粗たんぱく質で2700万トンにのぼる。自給率は、原料作物によって異なり、ナタネは79%だが、大豆は5%となっている。主にブラジル、アルゼンチンおよび米国から年間1700万トン程度を輸入しており、そのうち約1300万トンが大豆由来である。最大の流通先(93%)である動物用飼料向けは、高品質な飼料に対する需要が増加しているほか、食品部門では、食肉や乳製品の代替としての需要増から毎年2桁台の成長を遂げているなど、市場は成長している。
また、豆類生産は有機窒素肥料の使用が少なく、温室効果ガス削減に貢献することなどについても報告している。
欧州委員会はそれらを踏まえ、自給率の向上と経済的または環境に配慮した生産の実現のため、同報告書で次の分野について、既存の政策と新政策案を取りまとめている。
・ 植物性たんぱく質の生産支援を将来の共通農業政策(CAP)に含める。特に、農村開発プログラムの下でのエコスキームと環境/気候対策への義務を通じた生産農家への補助や所得補償のカップル支払いなど
・ 加盟国の研究プログラムおよび技術革新の競争および「2021年から2027年のHorizon Europe計画(研究や技術革新に係る取組)」の予算の倍増
・ より良い市場監視ツールによる市場分析と市場透明性の向上
・ 約2億ユーロ(260億円)にのぼるプロモーション計画(2019年)の支援による栄養、健康、気候、環境分野における植物性たんぱく質の利点の促進
・ 専用のオンラインプラットフォームを通してなどのサプライチェーンマネジメントの最善策、持続可能な農業の実践などの知識の共有