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大気汚染の悪化を受け、タイ政府はサトウキビの焼き畑対策に本腰(タイ)

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最終更新日:2019年2月21日

 タイ政府は2月14日、サトウキビの梢頭部や葉を燃やした後に収穫する焼き畑が大気汚染悪化につながっているとし、焼き畑の抑制に向けた対策に乗り出すと発表した。その大きな柱の一つとして、ハーベスタの導入を促進するため、2019年からの3年間で合計60億バーツ(213億6000万円(注1))の融資枠(年利1%、返済期間10年)を設定する計画である。

 タイでは、以前から焼き畑によるサトウキビの収穫が行われてきたが、大気汚染の発生源として関心を集めるようになったのは、数年前からである。背景には、サトウキビの作付面積が急速に拡大していることに加え、刈り取ったサトウキビから葉を手作業で取り除き、それらを束にしてトラックに積み込む熟練労働者の高齢化が進んだことで、人手不足が顕在化し、収穫作業に手間がかからない焼き畑を安易に選択する生産者が増えたことにある。結果、2017/18年度(10月〜翌9月)の焼き畑によるサトウキビの収穫量は、全体の約7割を占める。このため、同国政府は焼き畑による収穫よりもはるかに労力が少ないハーベスタ収穫(注2)への転換を促すことで焼き畑に起因する大気汚染を大幅に減らそうと考えている。

(注1)為替レートは2019年1月末日TTS相場の値であり、1タイ・バーツ=3.56円である。
(注2)タイのハーベスタ収穫率は、地域によって多少の差があるものの、おおむね2割とされ、今なお手刈りでの収穫が広く行われている。
写真1 大気汚染の悪化でバンコク市内ではマスクを付けた人が目立つ
写真1 大気汚染の悪化でバンコク市内ではマスクを付けた人が目立つ
写真2 焼き畑による収穫の様子
写真2 焼き畑による収穫の様子
 ただし、ハーベスタが普及するまでにはかなりの時間を要するため、同国政府は当面の対策として、製糖業者に対し製糖期間延長の協力を要請する。タイでは、4月中旬のタイの祝日「ソンクラーン」前に製糖業者が製糖操業を終えることが一般的であるため、生産者はこの日までに工場へのサトウキビの搬入を間に合わせようと収穫を急ぐあまり焼き畑での収穫が増加する傾向にある。同国政府は、「製糖期間の延長が実現できれば、こうした状況を多少は改善できる」とみている。

 このほか、焼き畑以外の方法で収穫した生産者にはサトウキビを優先的に圧搾できる権利を付与する(注3)ことなども検討されており、これらの対策を通じて2018/19年度のサトウキビの収穫においては、焼き畑による収穫率を6割以下にする方針である。

(注3)サトウキビは、収穫直後から劣化が進み、糖分が消失し始めるため、収穫後24時間以内に圧搾することが望ましいとされているが、タイの収穫最盛期は工場に搬入されても1日以上一時保管される場合がある。タイは、糖分の量に応じて生産者に原料代が支払われる仕組みであるため、サトウキビの品質の良し悪しに加え、収穫から圧搾までの時間の長さも生産者の手取りに大きく影響する。
【坂上 大樹 平成31年2月21日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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