日本との二国間貿易協定の促進をはじめ、米国-メキシコ-カナダ協定(USMCA)の議会での早期批准および中国やEUにおける米国産牛肉市場アクセスの拡大が目標とされた。
分科会の場では、はじめに米国産牛肉が様々な輸出先において関税障壁や非関税障壁に直面している現状を示し、貿易協定の必要性が説かれた。具体的には、日本・中国の高い関税率をはじめ、中国・日本・台湾によるBSE関連の規制および中国・EUによるホルモンに関する規制を例示する一方、米国が締結している各種のFTA(北米の自由貿易協定、韓米自由貿易協定、米国-パナマ自由貿易協定、米国-コロンビア自由貿易協定)では、関税と非関税障壁のいずれもが即時、あるいは最終的には撤廃される点が強調された。
また、米国とFTAを締結していない国の牛肉需要が高まる中、米国と競合する主要牛肉輸出国がそれらの国々において市場シェアを拡大させていることについて焦燥感が示された。分科会の場では、(1)日本がEUとEPAを締結し、かつCPTPP協定(TPP11協定)の加盟国ともなったこと、(2)中国が豪州、ニュージーランドと協定を締結し、また東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を主導する立場にもあることに加え、ブラジル産、アルゼンチン産、EU産牛肉の輸入を許可していること、(3)メキシコがCPTPP加盟国となり、豪州やニュージーランドが同国市場への無税アクセスを獲得したことおよびメキシコがEUと貿易協定を締結したこと、などについて情報提供がなされた。
ただし、今後の輸出市場に関する報告において日本は最大の輸出先と位置付けられ、トランプ大統領と安倍総理が二国間における貿易協定交渉を希求すると宣言した点に期待感を示すとともに、今後の対日牛肉輸出を見通す上でネガティブな要素となり得る以下2点を指摘した。
- 干ばつで淘汰が進んでいた豪州において牛群が回復すれば、米国産牛肉の対日輸出にさらなる脅威となる可能性。
- 米国食肉輸出連合会(USMEF)の試算によれば、米国が日本との貿易協定を締結できなければ、米国の年間牛肉輸出額の損失は2023年までに5億5000万米ドル、2028年までに12億米ドルを超過する見込み。
さらに、本分野に関するプレゼンテーションでは、北米で新たに合意に至った自由貿易協定である米国-メキシコ-カナダ協定(USMCA)についても言及がなされた。報告では、同協定下の牛肉・生体牛貿易が従来の北米自由貿易協定(NAFTA)と同様であり、カナダ、メキシコへの無税アクセスが維持された点や、USMCAでは原産地表示規制が含まれなかったことが解説され、発効に当たっては加盟3カ国それぞれの議会で批准される必要があることが再確認された。