WTO、中国のコメと小麦の最低買付価格制度は協定違反と判断
世界貿易機関(WTO)の紛争解決小委員会(パネル、注1)は、2月28日、中国のコメと小麦に関する制度がWTO協定違反だとする報告書を発表した。
注1:WTOの紛争解決手続きに定められたもので、WTO協定との整合性について審議する。WTOの紛争解決は二審制で、小委員会が一審にあたり、二審として上級委員会がある。
本件は、中国政府が行うコメ、小麦、トウモロコシの買付に関する制度について、米国の求めに応じて2017年1月から審議されていた。米国は、この制度がWTO協定における「価格支持」(注2)に該当し、その金額が約束の水準(中国がWTOに加盟した際に約束したもの。中国のデミニミス(注3)である農業生産額の8.5%以内)を上回っていると訴えている。
注2:国内農業生産を刺激するため貿易に与える影響が大きいとして、削減すべきとされている。価格支持のほかには、毎年の生産量に基づく直接支払などが同様の理由で削減すべきとされ、これらのうち、デミニミスを超過する部分が「黄の政策」と呼ばれ、各国が削減する約束をしている。
注3:貿易を歪める性格を持つものの、農業生産額に比べて金額が小さいため、削減の対象外とされている。
報告書では、コメ、小麦の2012〜2015年の間の価格支持について分析したところ、価格支持の金額が約束の水準を上回っていると判断した。例えば、小麦の2015年の価格支持の金額は679億元で、小麦の生産額3031億円の22.4%にあたる。
コメと小麦の制度(最低買付価格制度)は現時点でも維持されているものの、コメは2016年以降、小麦は2018年から最低買付価格が引き下げられている。また、トウモロコシの制度(臨時買付備蓄制度)は2016年度(9月〜翌8月:作物年度)産から仕組みが見直された(注4)ため、価格支持に該当しなくなったとされている。
報告書は、中国に対してWTO加盟時の約束を守るよう求めると結論している。
今後、2月28日から21日以降60日までにWTOの紛争解決機関(DSB)において、採択に付され、採択されればWTOの最終的な判断である「勧告および決定」となる。
なお、報告書の論旨に異議がある場合、中国は上記採択がされる予定の会合までに、法的解釈の妥当性について上級委員会で改めて審理を行うよう要請することができる。
【三原 亙 平成31年3月11日発】
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