2019年の牛肉輸出量は前年をかなり大きく上回る見込み(アルゼンチン)
米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は4月1日、「GAIN REPORT 〜Argentina Livestock and Products Semi-annual」を公表した。これによると、2019年のアルゼンチンの飼養頭数やと畜頭数は2018年から大きな変化は見られないものの、輸出量は、中国を中心とした各国からの引き合いが強まることなどから、前年比15.2%増の58万5000トン(枝肉重量ベース)と見込まれている(表1)。
【飼養頭数】
2019年の飼養頭数は、昨年と大きな変化はなく、前年比0.2%増の5381万5000頭と見込まれている。同国の牛肉産業は、2016年以降約3年間にわたり、洪水や干ばつの被害に悩まされていたものの、今年は良好な天候が見込まれていることから、今後の増頭に期待が高まっている。
【と畜頭数、生産量】
2019年のと畜頭数は、前年比0.7%減の1330万頭と見込まれている。これは、昨年までの洪水や干ばつから回復し、牧草状態が良好と見込まれていることから、生産者が育成期間を延ばすことにより、出荷時期が遅れることに加え、雌牛を留保する動きも見られていることが要因として挙げられている。また、生産量もそれに伴い同1.6%減の300万トンと予想されているものの、枝肉重量が増加すれば生産量も増加する可能性があると見込まれている。
【輸出量】
2019年の輸出量は、前年比15.2%増の58万5000トン(枝肉重量ベース)と見込まれている。これは、前年から7万7000トンの増加であり、2017年比では約2倍となっている。国別に見ると、全体の6割以上を占めるとされている中国および香港向けの伸びが今後も期待されている(表2)。一方、2017年12月から18年10月までブラジルからの輸入を停止していたロシア向けについては、その代替需要により2018年は大幅な輸出増になったものの、2019年は、ブラジルとの競争に直面することが見込まれている。ただし、ブラジル産のロシア向け輸出は、停止前までの水準には至っていないことから、引き続き一定の需要が見られるとしている。
また、2018年12月には、米国向け輸出が17年ぶりに再開され、早速500キログラムのリブアイが輸出された。米国向けには、2万トン(製品重量ベース)の生鮮・冷蔵牛肉の関税割当があり、現在10施設が輸出施設として認定されている。2019年注目の輸出先として、今後の輸出拡大が期待されており、業界関係者によれば、コーシャ(ユダヤ教の戒律に従った)製品を含めて、1万〜1万5000トンの輸出を見込んでいる。
現状では、業界は、アルゼンチン産牛肉の輸出の半分以上を占める中国向けのような、需要の強い加工用牛肉の市場への大量の牛肉輸出に力を入れている。一方、現地関係者の意見として、高級部位の輸出は、現状の生産量では限界を迎えているものの、飼養頭数や牛肉供給がかつての水準まで回復すれば、業界は米国、日本、EUといった市場への高級部位の輸出に力を入れ始めるだろうとしている。
【国内消費】
国内消費に関しては、輸出需要の増加や景気の鈍化などを背景に、前年比5.0%減の241万5000トン(枝肉重量ベース)と見込まれている。
【佐藤 宏樹 平成31年4月4日発】
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