2017年農業センサスが公表される(米国)
米国農務省(USDA)は、4月11日に2017年農業センサスの結果を公表した。USDAは、農業センサスにより郡単位での米国の農場や牧場、生産者、農場経営を行うための意思決定などに関する約640万個もの新しい情報が入手可能となるとともに、農業センサスは米国農業の歴史を語る大切な一部としている。パーデュー農務長官は、「2017年農業センサスを提供できたことを嬉しく思う。私たちは、2017年農業センサスの結果を用い、米国の農業がどのように変化しているかを語ることができる。我々はこの情報を活用して、農家や牧場主の支援、農村の繁栄、効率効果的かつ誠実な管理という目標を達成するよう努力する。」と述べた。
また、全国農業統計局(NASS)のフーベルト・ハマー局長は「新しいセンサスのデータは、郡単位での農業の動向や変化に関する洞察を以前のセンサスと比較できるように作られている。今回のデータは米国の農業構造の一貫したトレンドを示しているが、前回のセンサスと比べると変動があった項目が見られるだけでなく、新たに農場経営を行うための意思決定などに関するデータが加えられている。データを掘り下げて活用しやすくなるように、従来のデータの提供形式に加え、新たなデータ検索方法を含め、さまざまなオンライン形式を提供することが可能になった。」と述べた。センサスのデータは米国の農場と牧場に関する人口動態、経済、土地等に関する貴重な洞察を提供している。
2017年農業センサスの主なハイライトは次の通り
・農場と牧場数は2012年農業センサスから3.2%減少し204万戸、1戸当たりの平均面積は同1.6%増の441エーカー(178ヘクタール)、総面積は同1.6%減の9億エーカー(3億6422万ヘクタール)。
・最小規模農家(1〜9エーカー)の戸数は27万3300戸で、その合計農地面積が全農地面積に占める割合は0.1%であるのに対し、最大規模農家(2000エーカー以上)が占める割合は8万5127戸、同58%となっている。
・10万5453戸の農家で2017年の農業売上高の75%を占めるが、2012年農業センサスの11万9908戸からは減少している。
・204万戸の農家と牧場のうち、生産額が100万ドル以上の農家は7万6865戸であり、これだけで3890億ドルの総生産額の3分の2を占めているのに対し、5万ドル未満の農家は156万戸であり、総生産額のわずか2.9%となっている。
・飼料、家畜の購入、労働力、肥料、借地料といった農業支出額は3260億ドル。
・平均農業収入は4万3053ドルであり、黒字経営の農家は全体の43.6%。
・家族経営の農場と牧場は96%。
・インターネットへのアクセスが可能な農場は、2012年農業センサスから5.8ポイント上昇し、75.4%。
・13万3176戸の農場と牧場では再生可能エネルギー生産システムを活用しており、2012年農業センサスの5万7299戸から2倍以上に増加。
・13万56戸の農家は消費者に直接販売を行い、売上高は28億ドル。
・2万8958戸の農家が小売店等に販売し、それらの売上高は90億ドル。
2017年農業センサスでは、農場経営の意思決定に加わる人々に関する情報をより的確に反映させるため、人口動態に関する質問を変更している。その結果、生産者の総数は2012年農業センサスから約6.9%増加し、340万人となった。新しく確認の取れた生産者は主に女性であり、男性の生産者数は同1.7%減の217万人となったのに対し、女性生産者の数は同26.6%増の123万人となった
人口動態のハイライトは以下の通り
・生産者の平均年齢は57.5歳となり、2012年農業センサスから1.2歳上昇。
・35歳以下の若い生産者は、24万141戸の農場に32万1261人。若い生産者が経営の意思決定を行う農場では農地面積と売上高が平均より高い値を示している。
・畜産部門における経営の意思決定を行う割合は、若い生産者の方がわずかに他の年齢層より高い。
・4人に1人は農業経験が10年以下で平均年齢が46.3歳の新規就農者。新規就農者が経営の意思決定を行う農場は農地面積と生産額が平均を下回る。
・全生産者の36%が女性であり、56%の農場では少なくとも1人の女性が経営の決定権を持つ。女性が決定権を持つ農場では面積と生産額が平均を下回る。
・女性生産者の方が、記録管理、財務管理と共に日々の経営の意思決定に関与する傾向にある。
今回の2017年農業センサスによれば、前回の2012年農業センサスと比べて、農場数と農地面積がともに減少し続けていることが判明した。また、同時に、大規模農場と小規模農場の割合が増加し、中規模農場が減少していること、全ての農家や牧場主の平均年齢が上昇し続けていることが判明した。これらのことから、農業大国である米国においても、日本と同様に経営の大規模化、生産者の高齢化が進行していることが示唆されている。
農業センサスは1840年に初めて行われた。それ以降は10年ごとや4〜5年ごとに行われてきたが、1982年以降は、現在の5年ごとに更新される形となっている。USDAのNASSは農業を営んでいる可能性のあるところも含め、約300万戸もの農場や牧場にアンケートを送付して回答を得ており、回答した人の約25パーセントがオンラインで回答している。
【調査情報部 平成31年4月26日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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