欧州委員会、豚肉の短期的需給見通しを公表(EU)
欧州委員会は2019年7月3日、農畜産物の短期的需給見通し(注)を公表した。このうち豚肉の需給見通しについては、2019年の豚肉輸出見込みなどが、4月の公表から上方修正された。
(注)欧州委員会は、農畜産物の短期的需給見通しを年3回(晩冬、初夏、初秋)、中期的需給見通しを年1回(12月)に公表している。
輸出需要の増加により、2020年の生産量は増加の見込み
2018年12月の家畜飼養頭数調査によると、EUの繁殖母豚飼養頭数は前年比3%減となり、この結果、2019年第1四半期のEUの豚肉生産量は、前年同期比0.7%減となった。主要生産国をみると、スペインは輸出の増加に支えられて生産が増加しているものの、ドイツ、オランダ、ポーランドでは減少した。しかしながら、世界的な需要増加に加え、EUの豚枝肉卸売価格が上昇していることから、今後、EUの豚肉供給は概ね安定した状態を維持するとみられ、2019年の豚肉生産量は、前年比0.3%増と見込まれる。2020年はEUの生産基盤は回復するものの、豚価が高い水準であるにもかかわらず、環境規制などの制約を受けることから、豚肉生産量は緩やかに増加する(同1.4%増)と見込まれる。
なお、EUの一人当たりの豚肉消費量は、豚肉価格の上昇により、ほかの肉類、特に家禽肉の需要が高まるとみられることから、2019年は前年と比べ0.5 キログラム減の32.1キログラムと見込まれる。
2019年、2020年の豚肉輸出量は増加
中国でのアフリカ豚コレラ(ASF)の発生により、2019年の同国の豚肉生産量は前年比20〜35%減となるとみる専門家もいる。ASFはベトナムやカンボジアといった他のアジア諸国にも広がっており、豚肉の消費量の一部が他のたんぱく源にシフトし、特に家禽肉に対する需要が高まるとみられる。
2019年1〜4月の中国へのEUの豚肉・内臓肉の合計の輸出量は前年同期比37%増となり、EUの輸出量全体の43%を占めた。なお、EUの輸出量のうち、豚肉は同17%、内臓肉は同6%増加した。
2019年末までには、EUの豚肉生産量はそれほど増えないものの、輸出は中国の需要に支えられ、前年比12.0%増と見込まれる。また、その後も輸出の伸びが期待できることから2020年も同程度の増加が見込まれる。
【前田 絵梨 令和元年7月16日発】
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