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欧州委員会、酪農・乳製品の短期的需給見通しを公表(EU)

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 欧州委員会は2019年7月3日、農畜産物の短期的需給見通し(注)を公表した。このうち酪農・乳製品の需給見通しについては、2019年の乳製品の輸出見込みなどが、4月の公表から上方修正された。
(注)欧州委員会は、農畜産物の短期的需給見通しを年3回(晩冬、初夏、初秋)、中期的需給見通しを年1回(12月)に公表している。
乳の表
2019年、2020年のEUの生乳出荷量はわずかに増加見込み
 
 この春、EUの主要な生乳生産地域は降雨に恵まれ、牧草の生育状況が順調であった。また、飼料価格が比較的安価であったため、酪農家でより多くの配合飼料を使用することができ、冬季の飼料不足を補うことができた。この2つの要因により2019年第1四半期の生乳出荷は安定し、予想を上回る出荷量となった。
 2018年は夏の干ばつの影響で第4四半期の生乳出荷量が前年同期比減となったことなどから、2019年に入りEUの平均生乳取引価格は、100キログラム当たり34ユーロ(4,216円:1ユーロ=124円)を超えて推移しており、前年より6%高、2014〜2018年平均よりも7%高となっている。
 世界的に乳製品の需要が安定していること、良好な気象条件、好調な生乳取引価格などに支えられ、EUの生乳出荷量は、2019年は前年比0.9%増、2020年も同程度の増加が見込まれる。なお、国ごとに見ると、アイルランド、ポーランド、デンマーク、英国では増加、フランスやドイツは前年並みの生産が見込まれている。
 
EUの脱脂粉乳生産は、輸出に支えられる
 
 2019年に、公的在庫(2019年6月の売渡入札で全て売り渡し)と民間在庫の放出により22万5000トンの脱脂粉乳が市場に出回ることが見込まれている。在庫からの大量の放出にもかかわらず、EU域内外で需要が継続するとみられることから、2019年の脱脂粉乳生産量は、前年比2.9%増となると見込まれる。EU産脱脂粉乳の価格は上昇しているものの、競争力を維持している。2019年1〜4月の脱脂粉乳輸出量は約35万トン(前年同期比34%増)となり、中国、インドネシア、フィリピン向けの輸出が2倍以上となった。一方で、EUにとって主要な競合国である米国の脱脂粉乳の輸出量は、15%減少している。2019年は、EUの脱脂粉乳輸出は前年比14%増となることが見込まれる。また、2020年の生産量は増えるにもかかわらず、2020年初めの在庫量が低い水準にあるため、輸出量は前年比13.0%減になると見込まれる。
 また、EU産のバター価格が下落しており、今後、国際市場での競争力が増すと見込まれることから、2019年はバターの輸出量が前年比5.0%増となると見込まれる。なお、EU域内の消費量の増加も見込まれる。
 一方、2019年1〜4月のチーズ輸出量は、米国(前年同期比7%増)、日本(同18%増)、スイス(同2%増)への輸出が増加し、前年同期比3%増となった。2019年のEUの域内消費量は前年比0.5%増、輸出量は同3.0%増と見込まれ、他の乳製品と比べて安定した収益が見込まれることから、生産量は同0.9%増となると見込まれる。
【前田 絵梨 令和元年7月16日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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