業界団体の英国食品・飲料連盟 (Food and Drink Federation(FDF))は7月23日、英国与党の保守党が同日、メイ首相の後任を選ぶ党首選にてジョンソン前外相を新党首に選出したことを受け、声明を発表した。
FDFのChief Executiveであるイアン・ライト氏は同声明の中で、ジョンソン氏が党首選の中で欧州連合(EU)との再協議の見通しが立たない中、離脱期限である10月31日にEU離脱(BREXIT)することを明言しており、「合意なき離脱」のリスクが高まっていることについて警告した。
同氏は、「食品・飲料産業は、英国最大の製造業であり、業界で45万人以上の雇用を抱え、国内の重要なインフラ」であるとし、ジョンソン氏が辞さないとしている「合意なき離脱」は、政府と協調して輸出を後押しし、技術革新を促進する業界の方向性を「破壊」するものとした。また、「場合によっては、英国の食料・飲料産業に致命的な損害を負わせ、価格は上昇し、不足する製品も発生し、買い物客や消費者に対しての混乱が広範囲に及ぶであろう。我々は、新首相と政府が我々と協力し、英国の食料・飲料が繁栄することができるよう、最も近い近隣諸国との可能な限りの最善の貿易および規制関係を保証する離脱協定を締結するよう働きかける」とした。
その他の農業・食品団体も同様の声明を発表している。英国羊協会(National Sheep Association (NSA))は、ジョンソン氏に対し、「合意なき離脱」による貿易の混乱をもたらさぬようBREXIT政策を策定するに当たり、安定性と「ポピュリズム政治とならない」ことに焦点をおくよう求めた。また、NSAのChief Executiveであるフィル・ストッカー氏は、「もはや策を弄する時間はない」とし、英国産羊肉(※)の約35%が輸出向けであり、かつその約96%がEU域内市場向けであることから、まず必要なのは、混乱を回避するための戦略的な対策の措置であり、農業および地域の役割を理解した英国環境・食料・農村地域省 (Department for Environment, Food and Rural Affairs)との一体的な動きが必要である」とした。
※:AHDB「The UK Sheep Yearbook 2019」によると、2018年の羊肉(ラムおよびマトン)の生産量(枝肉重量ベース)は28万8600トン、輸出量(枝肉重量ベース)は生産量の30.2%の8万7300トン。
EU側は、BREXITに係る再協議を拒否する姿勢であるものの、先日、次期欧州委員長に指名されたドイツのフォンデアライエン前国防相は、必要によっては離脱時期の再延期を容認する姿勢を示している。英国農業・食品業界などにとって直近の最大懸念事項といえるBREXITをめぐる情勢については、その期限が刻一刻と迫っており、関係者の注目度は極めて高い。