英国の全英農業者組合(NFU:National Farmers Union)は、同国のロンドン大学ゴールドスミス校が、気候変動に配慮するために大学構内での牛肉製品販売を禁止したことに対し、あまりに短絡的で、自国の牛肉生産に対する理解が不足しているなどとして反論した。
ロンドン大学ゴールドスミス校は8月12日、気候に対する非常事態宣言として、同校を2025年までにカーボンニュートラル(注)な組織とするため、温室効果ガス排出量を削減する目的で、9月から始まる新学期から全ての大学構内の店舗および食堂で、牛肉製品の販売を禁止すると発表した。このことは、農業関係者のみならず多くの一般紙などでも取り上げられるなどして、英国内で高い関心を集めていた。
(注)「カーボンニュートラル」とは、事業者などの事業活動などから排出される温室効果ガス排出総量の全てを他の場所での排出削減・吸収量でオフセット(埋め合わせ)する取組み(環境省ウェブサイトから)
NFUのスチュワート・ロバーツ副会長は、気候変動に対処するために1つの食品だけ選ぶのはあまりにも短絡的であると述べた。また、同大学の今回の発表は、英国の放牧を主体とした環境負荷の少ない牛肉生産と、世界的に行われる牛肉生産との違いが理解されずに行われているとし、英国の牛肉生産は世界的な牛肉生産の4割の温室効果ガスしか排出しないと反論した。加えて、国際的に批判の対象となることがある世界的な牛肉生産と自分たちが行っている放牧を主体とした環境負荷の少ない肉牛生産が同じように批判されていることに非常に失望しているとした。
なお、同校は、その他にもペットボトル入り飲料水および使い捨てプラスティックカップの使用削減(使用には10ペンス(13円)の追加徴収)、キャンパス全体へのソーラーパネルの設置などに取り組むことを、フランセス・コーナー学長が同大学のウェブサイトで発表した。
現地報道などによると、このような温室効果ガス排出量削減の動きは英国各地の大学で広がりを見せており、学生へのインタビューなどからは好意的な反応が見られている。同学長は、「組織が気候変動を止める責任を真剣に考えるべきだという世界的な要求を無視することはできない」とコメントしている。
なお、欧州委員会によると、欧州連合全28カ国の温室効果ガス排出総量のうち、農業生産由来のものは全体の10.3%(2012年)となっている。
気候変動への取組みを表明するロンドン大学ゴールドスミス校のウェブサイト