豪州牛肉に特別セーフガード発動(中国)
中国は豪州と自由貿易協定(中豪FTA)を締結しており、発効5年目である2019年は、骨付きもしくは骨付きでない牛肉の関税は6.0%となっている。また、冷凍牛肉と冷蔵牛肉合わせて輸入量が17万4454トンを超えると特別セーフガードが発動し、関税率が最恵国税率まで引き上げられる(表1)。
中国では、経済発展による生活水準の向上により、牛肉消費が増加している。しかしながら牛肉生産量は近年は横ばいで推移しているため牛肉輸入は増加し続けている中、昨年から流行しているアフリカ豚コレラの影響による牛肉への需要シフトも加わり、2019年1〜6月の輸入量は、冷凍牛肉が前年同期と比べて51.5%増の68万3000トン、冷蔵牛肉が同167.8%増の1万5000トンであった。
このうち豪州からの輸入量は、冷凍牛肉が同57.0%増の11万6000トン、冷蔵牛肉が同143.3%増の1万トンで、合わせて同61.6%増の12万6000トンとなった(表2)。現地報道によると、8月15日までに豪州からの輸入量は17万2411トンとなり、2018年のキャリーオーバー分(注1)2876トンと合わせるとセーフガード発動基準を超過したため、同月17日から最恵国税率(12〜25%)が課されることになった。
(注1)前年、セーフガード発動時に海上輸送中などにより未通関の状態の貨物であって当該年中に通関されるものは、発動前税率が適用され、その通関数量は翌年のセーフガード対象数量に加算される。
なお、近年、中国は、牛肉の輸入先を広げている。2017年には米国など7カ国、2018年には英国など2カ国からの輸入を解禁した(注2)。
2019年に入ると、6月にパナマからの牛肉輸入が開始された。また、カザフスタンからの生体牛の輸入や、ラオスおよび南アフリカからの牛肉輸入について手続きを進めていると報道されている。
主要輸入先である豪州産牛肉のセーフガードが発動したことから、今後もこのような輸出先拡大の傾向は続くと考えられる。
(注2)2018年までに中国が牛肉の輸入を認めている国については、「畜産の情報」2019年1月号「急拡大する中国牛肉消費の実態」P.97(https://www.alic.go.jp/content/001158009.pdf)を参照されたい。
【寺西 梨衣 令和元年9月2日発】
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