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穀物の生産見通しを発表(豪州)

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 豪州農業資源経済科学局(ABARES)は9月9日、2019/20年度(7月〜翌6月)夏作物の生産予測を発表するとともに、冬作物の生産予測の見直しを行った(注)
 (注)豪州の夏作物は、10月〜翌年1月に播種、3月〜4月に収穫を行う。冬作物は、3月〜6月に播種、10月〜翌年2月に収穫を行う。また、本発表の段階では、2019/20年度夏作物の播種前であり、2019/20年度冬作物の収穫前である(図)
図 豪州の穀物生産の流れ

【夏作物】作付面積、生産量ともに全体で大幅減

 夏作物については、クイーンズランド(QLD)州およびニューサウスウェールズ(NSW)州において、干ばつにより土壌水分量が少ないこと、春の降雨量は、平均をはるかに下回る可能性が高く、生育に不利な環境条件が予測されていることを反映して、作付面積は、75万8000ヘクタール(前年度比28.2%減)と、大幅な減少を見込んでいる。生産量は、単収が干ばつの被害が大きかった前年と比べて回復するものの、それを上回る作付面積の減少により、207万6000トン(同19.9%減)と大幅な減少を見込んでいる(表1)。
 品目別作付面積第1位のソルガムについては、QLD州南部の土壌水分量が少なく、春にはさらに低下すると予想されているため、作付面積は39万1000ヘクタール(同21.2%減)、生産量は99万2000トン(同22.4%減)と、大幅に減少すると見込んでいる。ただし、QLD州中央部では、土壌水分量の回復や春の生育条件の好転が予測される地域もあり、減少は相殺されるとし、さらに、綿の価格低下により、ソルガムヘの転作も予想されるとしている。
 品目別作付面積で第2位の綿実については、干ばつにより栽培地域のダム貯水量が昨年よりも大幅に少なくなっていることから、綿実全体の作付面積は14万5000ヘクタール(同57.7%減)と5割以上減少し、生産量は41万6000トン(同39.4%減)と大幅な減少を見込んでいる。
 また、2017/18年度まで品目別作付面積で3位だった米は、綿実同様、かんがいを利用するため、2018/19年度において、作付面積および生産量が2017/18年度比9割以上減少した。2019/20年度の作付面積は、5000ヘクタール(前年度比0.0%)と回復することはなく、生産量は5万9000トン(同3.3%減)とやや減少を見込んでいる。
表1 夏作物の生産見通し

【冬作物】生産量は前年度の不作から回復するも、過去10年間平均を大幅に下回る

 冬作物について、干ばつにより前年度の作付面積、生産量が大幅に減少していたため、作付面積は1914万1000ヘクタール(前年度比6.4%増)とかなりの程度、生産量は3386万6000トン(同11.3%増)とかなり大きく増加を見込んでいる(表2)。しかし、生産量は6月の見通しから6.9%下方修正されており、2018/19年度までの過去10年間の平均値を16%程度下回っているとしている。
 生産量を地域別にみると、最大の生産地域である西オーストラリア(WA)州は干ばつにより土壌水分量が低く、作付けの開始が遅れたことにより、同18.8%減と大幅な減少を見込んでいる。一方、生産量の大幅な増加を見込むビクトリア(VIC)州は、ほとんどの作物にとって冬期の生育条件が良く、春先の降雨も非常に良好に影響し、同85.5%の増加が見込まれる。NSW州は、同77.1%の増加を見込んでいるもののこれは、前年度の生産量が少なかったためであり、例年より長い乾燥と暑さにより、2018/19年度までの過去10年間の平均値を51%程度下回っているとしている。さらに州南部では、現在の干草の価格高騰や、生育環境の悪化による収穫減の恐れから、一部を干草用に収穫する可能性があるとしている。
 主要品目別に見ると、小麦は主産地のWA州で作付面積が同5%程度減少し、生産量を805万トン(同20.7%減)と見込むものの、そのほかの地域で増加するため、全体の生産量は1910万2000トン(同10.4%増)とかなりの程度増加を見込んでいる。大麦についても、小麦同様、WA州では同13.5%減とかなり大きく減少が見込まれるものの、NSW州(同77.8%増)、VIC州(同90.9%増)および南オーストラリア州(同23.8%増)を中心に大幅に増加するため、947万9000トン(同14.1%増)とかなり大きく増加を見込んでいる。小麦は、2018/19年度までの過去10年間の平均値を22%程度下回る一方、大麦は6%程度上回っていると見込んでいる。
表2 冬作物の生産見通し
【菅原 由貴 令和元年9月19日発】
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