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EUとメルコスールとのFTA、EUの批准手続きは難航必至

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最終更新日:2019年10月1日

 EUの政策に対して賛否を判断するオーストリア議会の小委員会は9月19日、6月末にEUとメルコスール(南米南部共同市場)(注1)が政治合意した自由貿易協定(FTA)について、締結に反対する決議を採択した。同委員会は、決議に基づき政府の意思を法的に拘束する権限を有していることから、オーストリア政府はこの決定に従い、加盟国の閣僚級代表により構成される欧州理事会において、同FTA締結に関する議案に反対票を投じることとなる。
 同FTAを発効させるには、EUは欧州議会の同意と欧州理事会での全会一致の決定が必要となるが、今回のオーストリア議会の決定によってEU内の批准手続きは難航することが予想される。

 メルコスールとのFTAをめぐっては、8月にもフランスとアイルランドがアマゾンの森林火災に対するブラジル政府の対応が不十分であることを理由に、FTA締結を拒否する旨の声明を発表しており、早期発効の見通しは不透明となっていた。現地報道によると、EU各国がメルコスールとのFTA締結に抵抗する姿勢を示す背景には、同FTAに反対する農業団体などが政府への活発なロビー活動を展開し、必死に巻き返しを図っていることがある。
 砂糖については、ブラジル産粗糖に対して現行の関税割当数量(33万4054トン)(注2)の範囲内で無税の関税割当枠(18万トン)を設けることで合意しているが、欧州の製糖団体などは「史上最悪の譲歩」と酷評し、強く反発しており、合意の撤回と再交渉を求めている。  

 EUの粗糖の輸入量の推移を見ると、年により変動があるものの2018年はブラジルからの輸入量が最も多い(図)。メルコスールとのFTAが発効すれば、同国からの輸入シェアが大きく広がる可能性がある。

(注1)外務省によると、メルコスールは域内の関税撤廃などを目的に発足し、アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、ベネズエラ、ボリビアの6カ国が加盟している。ただし、ベネズエラは加盟資格停止、ボリビアは各国議会の批准待ちで現在議決権はない。
(注2)ブラジル産粗糖に対する関税割当内の関税率は1トン当たり98ユーロ(1万1662円〈2019年8月末TTS、1ユーロ=119円〉)、関税割当外の関税率は同339ユーロ(4万341円〈同〉)である。
図 EUの粗糖の国別輸入量
【坂上 大樹 令和元年10月1日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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