2019年10月27日の大統領選挙で政権交代を果たし、12月10日に発足したアルベルト・フェルナンデス新政権は、12月14日に政令37/2019号を公布し、輸出税(注)課税率の引き上げを発表した。さらに、12月23日には輸出税課税率の更なる引き上げを可能とする内容を含む社会連帯・生産性回復法(法律第27541号)を官報で公布した(表1)。
米国農務省(USDA)は、8月11日に行われた大統領選の予備選挙においてアルベルト・フェルナンデス氏が大勝した結果を受けて、政権交代が起これば輸出税の引き上げが実行されることが予想されていたため、9月以降、農家は大豆の販売を積極的に行ってきたと報告している。こうしたことから今回の引き上げが大きな驚きをもたらしたわけではないが、農業団体からは強い批判の声が挙がっており、現地報道によるとアルゼンチン農牧協会(SRA)は「今回の輸出税引き上げは、将来的に深刻な経済的・社会的危機から抜け出す時期に、生産、投資、雇用の面で大きな阻害要因になるだろう」としている。
アルゼンチンは穀物や牛肉の輸出量が多く、これらの品目においては世界の需給への影響が比較的大きい(表2)。しかしながら、ブラジルの現地報道によると、今回の引き上げについてはブラジル産穀物の価格優位性は高まるものの、大きな影響はないとの冷静な見方を示している。
今回の輸出税引き上げの目的は深刻な財政状況によるものとされているが、輸出拡大路線を進めていた前マウリシオ・マクリ政権から、再び国内保護色の強いフェルナンデス新政権になったことから、農家は今後の新政権の政策を注視しながら生産・販売戦略の見直しをすることとなり、作付面積や生産量への影響が今後どの程度出てくるのか注視する必要がある。
(注)輸出税は、輸出申告額(FOB価格)に対し品目ごとの税率を乗じた額を輸出者が納める仕組み。