ブラジルとインド、バイオ燃料生産で連携に合意するも、砂糖をめぐる対立は解決の目途立たず
最終更新日:2020年1月31日
ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領は、インド政府主催の憲法公布(1950年1月26日)を祝う「共和国記念日」の式典に来賓として出席するため、1月24日から27日までインドを訪問した。
同大統領はインド滞在中、同国のナレンドラ・モディ首相と会談し、インフラ整備や農業、エネルギー、文化、観光など15の分野において政府間で緊密な協力関係を構築することで合意した。うちエネルギー分野においては、両国の再生可能エネルギーに関わる全ての産業で相互の連携を促すほか、新たな投資を呼び込み、サトウキビやトウモロコシの非食部位(茎葉)などからバイオ燃料をより効率的に生成する技術に対する研究開発を支援する。また、地球温暖化対策を進めていくため、温室効果ガスの排出削減の方策などについて政府間で積極的に情報交換を行っていくことで一致した。
インド政府は、2030年までに自動車用燃料中のバイオ燃料の混合率をガソリンは20%、軽油は5%に引き上げる目標を掲げており(図)、バイオ燃料の生産で世界をけん引するブラジルの製糖業者のノウハウを取り入れることで、自国の製糖業者の生産性向上につなげたいとの狙いがあるとみられる。
今回の合意を受け、ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)(注1)は「インドにおけるバイオ燃料生産の拡大は、世界の砂糖とエタノールの需給均衡の維持に有益な効果が期待でき、インドの製糖業者にとっても多くの利益が得られるだろう」との声明を発表したほか、市場関係者からも、インドが抱える砂糖の余剰在庫解消の一助となると評価し、おおむね歓迎する声が聞かれた。
他方、ボルソナロ大統領は会談後、インド政府の砂糖産業に対する保護政策が世界貿易機関(WTO)の規則に反しているとしてブラジルがWTOに訴えている問題をめぐって、モディ首相から提訴取り下げを要請されたことを明らかにした。同大統領は「二国間での協議を通じてこの問題に取り組むことで合意した」と述べたものの、提訴を取り下げるか否かについては明言を避けた。
2019年2月から開始された両国のWTOでの紛争解決手続きは、二国間協議が不調に終わり、現在、裁判の一審に相当する紛争解決小委員会(パネル)に付託されている。しかし、WTOでは12月11日以降、裁判の最終審に相当する上級委員会での審理に必要な3人以上の上級委員を確保することができず(注2)、仮にいずれかの国がパネルの裁定を不服と判断しても、上訴申し立ての手続きができない状況となっている。
(注1) ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める中南部地域を区域としている団体。
(注2) 理由は、加盟国の全会一致での意思決定を原則とするWTOにおいて、任期が切れる上級委員の再任・後任の選定を米国が拒否し続けているためとされる。
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