有機(オーガニック)農地、6年間で34%増(EU)
欧州連合(EU)統計局(Eurostat)は1月29日、2018年のEU(英国を含む)における有機(オーガニック)農業の取組面積(注1)が6年前の2012年と比較して34%増加し、1340万ヘクタールとなったと発表した。また、EUの総利用農地に占める割合は、前年から0.5ポイント増の7.5%となった。
(注1)有機認証された農地面積と、有機に転換中の農地の合計である。有機と認証されるためには、品目により2〜3年の転換過程を要する。
同割合を加盟国別にみると、最も大きいのはオーストリア(24.1%)で、次いでエストニア(20.6%)、スウェーデン(20.3%)、イタリア(15.2%)となっている。一方、同割合が最も小さいのはマルタ(0.4%)で、次いでルーマニア(2.4%)、ブルガリア、アイルランド、英国(いずれも2.6%)となっている(図1)。
取組面積の最大はスペイン(EU全体の有機農業取組面積の16.7%)で、フランス(同15.1%)、イタリア(同14.6%)、ドイツ(同9.1%)が続き、この上位4カ国で過半を占める(図2)。一方、農業主要国のうち同面積が小さいのは、アイルランド(同0.9%)、ベルギー(同0.7%)、オランダ(同0.4%)などとなっている。
また、同期間の増加率は、スペインが27.9%増、フランスが97.3%増、イタリアが67.7%増、ドイツが27.2%増と主要国でも大きな増加がみられる他、まだ取組面積は小さいものの、ブルガリア(同229.2%増)、アイルランド(同124.8%増)、クロアチア(同223.4%増)では倍増以上となった。一方、減少はポーランド(同26.1%減)、英国(同22.5%減)の2カ国のみとなった(図3)。
EUによれば、EUの有機食品・飲料市場は米国に次ぐ世界第2位であり、小売売上高(2017年)で343億ユーロ(4兆1846億円)となっている。主な市場はドイツとフランスで、2カ国で半分以上を占め、イタリア、スウェーデン、英国、スペイン、オーストリア、デンマーク、オランダが続く。業界紙などによれば、最近の市場拡大の重要な要因の一つとして、大型のスーパーマーケットなどで有機産品が通常の棚のすぐ隣に配置されるようになっており、より多くの消費者の手に届きやすいようになったことが挙げられている。
なお、2019年12月1日に発足した新欧州委員会は、最優先課題として持続可能な社会を目標とした環境対策「欧州グリーンディール」(注2)を掲げているが、ヤヌシュ・ボイチェホフスキ農業・農村開発担当委員は、「欧州グリーンディール」への有機農業の貢献度が高いとし、さらなる有機農業の進展のための行動計画を提案する予定としている。
(注2)海外情報「欧州委員会発表の環境対策「欧州グリーンディール」に対する畜産業界の反応(EU)」(2020年1月16日発)を参照のこと。
また、各加盟国レベルでも有機農業の生産、消費を振興する支援が実施されている。デンマークやスウェーデンでは、公共調達として学校、幼稚園、病院、介護施設などで提供される食事を有機産品に移行するような施策がとられるなどしている。
今後、消費者の環境への配慮にとどまらず、健康志向やより自然なものを求める傾向の強まりなどから、有機農産物や食品に対する期待と選択がさらに増えるとみられている。
【調査情報部 令和2年2月14日発】
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