米国がブラジル産生鮮牛肉の輸入を再開(米国、ブラジル)
米国農務省(USDA)は2月21日、ブラジル農牧食糧供給省(MAPA)に対して、ブラジル産の生鮮牛肉の輸入再開について通知し、同日付けでブラジル産生鮮牛肉の輸入が可能となった。
両国は2016年8月1日、米国のブラジル産生鮮牛肉輸入解禁について合意し、同年9月から輸入が開始された。しかしながら、2017年3月17日にブラジル国内で食肉不正問題(一部の食肉加工場が衛生基準を満たさない食肉や食肉加工品を国内外へ販売していたという問題)が発生した。これを受けて、ブラジル政府は問題となった食肉処理場を輸出停止にしたものの、米国食品安全検査局(USDA/FSIS)による検査における生鮮牛肉の輸入拒否率は、ブラジル産が他国産と比べて高かった。このため、USDAは2017年6月22日、安全性に対する懸念が再発したとして、ブラジル産生鮮牛肉(冷凍・冷蔵)の輸入を停止すると発表していた(注1)。
輸入停止から2年が経過した2019年6月、FSISはブラジル国内28カ所の米国向け認定施設のうち8カ所の食肉処理場等を査察した。しかし、この結果でも依然としてブラジル側にいくつかの問題があることが判明した。こうした状況の中、ブラジルのテレーザ・クリスティーナ農牧食糧供給大臣は同年11月20日、ソニー・パーデューUSDA長官と、米国のブラジル産牛肉輸入停止問題について会議を行った。このような取り組みを経て、FSISは2020年1月、ブラジルが問題を解決し、米国向け生鮮牛肉輸出の適格性が回復したことを確認した。
今回の通知に対し、テレーザ・クリスティーナ大臣は「ここしばらく待ち望んでいたこのニュースを本日受け取ることができ、非常に幸運である。なぜならば、ブラジル産牛肉がとても重要な米国市場において米国産牛肉と同程度であると認められためである」と語った。
一方、全国肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)の国際貿易市場アクセス担当のシニア・ディレクターのケント・バッカス氏は2月21日、以下の声明を発表し、懸念を表明している。
「NCBAは科学的根拠に基づく貿易および、すべての貿易相手国と科学的根拠に基づく貿易を行おうと努力するトランプ政権の取り組みを強く支持する。しかしながら、NCBAはブラジル産牛肉の輸入再開について深刻な懸念を表明する。NCBAは、2016年に米国がブラジル産牛肉の輸入解禁の際に、ブラジルが示す科学的根拠が不足していることを疑問視していた。そのため、2017年の食肉不正問題を発端とした食品安全上の違反によりブラジル産牛肉の米国への輸入が停止されたことについて、驚きはなかった。
また、ブラジル産牛肉の輸入再開は、“Product of USA”表示に関する懸念を悪化させるものである。NCBAは、輸入牛肉に“Product of USA”ラベルを付すことを認めてしまっている表示問題(注2)に対処するため、USDAおよび業界団体との議論を継続していく所存だ。」
(注2)FSISは「米国内で加工された食肉商品は“Product of USA”と表示することができる」と定めているものの、「加工(Processing)」の定義が明確化されていないため、USDA認可施設で加工された外国産食肉が“Product of USA”の表示を付して販売されるケースがあるとして、2018年以降、さまざまな牛肉業界関係団体が表示に関する規制強化を要求している。また、こうした状況を受けて、2019年10月には連邦食肉検査法の修正を求める「US Beef Integrity Act」が議会に提出されている。
【調査情報部 令和2年3月6日発】
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