国際情報コーナー 農畜産物全般、畜産、野菜、砂糖、でん粉の海外情報、輸出促進対策などの記事、統計

ホーム > 国際情報コーナー > 海外情報 > 海外情報(砂糖) > 砂糖需給の見通し(米国)

砂糖需給の見通し(米国)

印刷ページ

最終更新日:2020年3月9日


 米国農務省(USDA)が今後の米国農業の動向について公表する2020 年農業アウトルックフォーラム(2020 Agricultural Outlook Forum)が首都ワシントンDC に隣接するバージニア州アーリントンにて2 月20、21 日の2 日間にわたり開催された。本稿では、USDA が公表した米国の砂糖需給の見通しを紹介するとともに、砂糖消費の見通しに関するセッションの概要について報告する。

 

1.砂糖需給の見通し

 2020/21砂糖年度(10月〜翌9月)における期首在庫は151 万6000 ショートトン(137万5000 トン。1 ショートトン≒907.185 キログラム、粗糖換算。以下同じ)と見込まれる。

 同年度のてん菜の作付面積は、天候の影響を受けた前年度に比べて作付面積が拡大することから、てん菜糖の生産量は531 万2000 ショートトン(481 万9000 トン)と見込まれる。てん菜の単収と糖度は、前年度から平均的なレベルまで戻ると予想されている。甘しゃ糖の生産量は413 万1000 ショートトン(374 万8000 トン)と見込まれる。フロリダ州での生産量は年々増加傾向にあり、ルイジアナ州およびテキサス州は減少した前年度から増加すると見込まれる。

 総輸入量は299 万5000 ショートトン(271 万7000 トン)と見込まれる。関税割当制度(TRQ)の下での輸入量は、158 万3000 ショートトン(143 万6000 トン)と見込まれる。メキシコからの砂糖の輸入は、前年度比41.2%減の100 万8000 ショートトン(91 万4000 トン)と見込まれる。なお、メキシコの砂糖生産量は、製品換算(Actual value)で約617 万8000 トンと予想されており、干ばつの影響を受けた前年度から回復が見込まれている。

 期末在庫量は166 万ショートトン(150 万6000 トン)、期末在庫率は13.5%と見込まれる。
表 米国の砂糖需給の推移

2.砂糖消費の見通し

(1)コートニー・ゲイン 米国砂糖協会会長による講演

 米国政府は、「米国人のための食生活指針」に基づき、糖類(注1)摂取量は、1日当たりの摂取カロリーの10%未満にとどめることが望ましいとするとともに、栄養成分表示において食品そのものに含まれる糖分に加え、加工の過程で添加された糖類の量についても分かるよう、「添加糖類(added sugars)」の量および「1日摂取カロリーに対する比率」の表示を義務付けている。2016年の添加糖類由来の消費カロリーは、対2000年比で30%減少した。これは、清涼飲料水の消費量の減少が影響しているとみられ、異性化糖の消費量が減少している一方、砂糖の消費量はおおむね横ばいで推移している。2019年の新商品における含有量は、いずれの糖類も対2016年比で減少傾向にあり、研究開発の段階で糖類の削減に取り組まれていることは由々しき事態と見ている。しかしながら、消費者は、制限によるのではなくバランスのとれた生活から健康を享受する考えに移行しており、クリーンラベル(注2)への対応として砂糖が受け入れられてきていることや甘味付けだけでない砂糖の効能について訴求していきたい。
(注1) 糖類とは、果物などに自然に存在する糖を除く、砂糖、異性化糖、ぶどう糖、ハチミツなどに含まれる糖と定義されている。

(注2) クリーンラベルは、一般的に、表示が単純明快で、いわゆる人口甘味料、化学合成物質などの添加物を利用しておらず、「ナチュラル、ヘルシー、クリーンな原材料」のみを利用している食品に対して使われる呼称。

(2)ヘイデン・ワンズ 米国ベーカリー協会 コモディティ・農業政策委員会委員長による講演

 消費者のニーズが異性化糖から砂糖に移行していることやクリーンラベルが求められる動きから、ベーカリー業界による砂糖消費量は、米国の砂糖供給量の2割以上を占めるなど増加傾向にあり、安定的な砂糖需給を求めている。

 一方、2019/20年度における砂糖生産量は、天候の影響から前年度比約9%減と2年以上減少傾向にあり、ベーカリー企業の経営への影響を懸念している。米国では、北部はてん菜由来、南部はサトウキビ由来の砂糖が生産される中で、同年度は特にてん菜の減産に伴い、北部のベーカリー工場への供給が不足する恐れがある。本業界は、工場の生産性を高めていることから稼働率の低下を避けたいものの、砂糖の供給不足によって物流網の再編や商品の発注から納品に掛かる時間の調整を余儀なくされている。USDAは、先に砂糖の追加輸入を許可したものの、主要輸入先国であるメキシコも減産により輸出に消極的であり、今年度産のサトウキビを圧搾し生産のピークにある米国の製糖企業は精製能力が限界か、それに近いことから、砂糖の供給不足を緩和する解決にはならないとみている。ハンバーガー用のバンズなどの需要が高まる夏までに状況の改善が期待されるが、ココアパウダーなど加糖調製品の供給も滞る恐れがある。旺盛な需要を満たしながら製品の価格を維持するため、我々は2019年公正砂糖政策法(注3)に賛同し、USDAに対し、フィリピン、ブラジルおよびタイといった主要砂糖生産国からの精製糖の追加輸入を認め、関税割当を柔軟に運用するよう求めたい。
 
(注3)現地報道によると、超党派の議員グループは2019年9月末日、砂糖プログラムの修正を求める2019年公正砂糖政策法(Fair Sugar Policy Act of 2019)の案を上下両院に提出した。同法案は、関税割当の調整に当たって、適正な砂糖供給水準を維持するための基準となっている期末在庫率を現行の13.5%から15.5%に引き上げることなどを求めている。甘味料利用者協会(the Sweetener Users Association (SUA))などの実需者団体がこれに賛同している。
 
写真 砂糖消費の見通しに関するセッションの様子
写真 砂糖消費の見通しに関するセッションの様子
【調査情報部 令和2年3月9日】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4396