ベルギー農業者、農業予算削減に抗議のトラクターデモ〜欧州委員会本部ビル前に100台超集結〜
2020年2月20日、ベルギーの首都ブリュッセルにある欧州委員会の本部ビル前にて、農業者によるデモが行われ、100台を超えるトラクターが集結した。
同日から欧州理事会(欧州連合(EU)首脳会議)の臨時会議としてEUにおける中期予算案(2021〜2027年)の協議が行われており、ベルギー農業者らは、欧州委員会が既に発表している共通農業政策(CAP)予算の削減案に対する抗議を行った。
ベルギーの生産者団体ワロン農業連盟(FWA)は2月18日にプレスリリースを行い、今回のデモは、多くのワロン地域(注1)の農業者収入におけるCAPによる補助金の重要性に鑑み、予算維持を要求するために行うものとしている。欧州委員会の現案では、CAPの所得支持政策である第一の柱で3.9%、農村振興政策である第二の柱で最大15%を削減するとしている。その要因として、移民政策など多方面への予算の分配や、ドイツに次ぐEU予算の2番目の拠出国であった英国のEU離脱などがあるが、この削減案が、特に次期CAPにおいてEU農業者に課される環境面などの要件増加などを考えれば、受け入れられるものではないとしている(注2)。
また、同プレスリリースの中で、農業者は食料安全保障および気候変動における今日の社会的課題に対し、より一層関与していく強い決意を持っているとし、それにもかかわらず、特に農業部門が既に厳しい経済状況にある中、CAP予算削減はそれを不可能なものにすると言及した。FWA代表のマリアンヌ・ストリール氏は現地での取材に対し、「家族農業の未来は危機に瀕している」と訴えた。
なお、デモの当日、デモに参加していた30代の農業者に現状および参加理由についてインタビューしたところ、「経営状況はよくない」とし、欧州委員会に対して「将来の食料供給を担う我々に対する十分な理解を求めたい」と回答があった。
注1:ベルギーは、3つの地域からなる連邦国家であり、ブリュッセル首都圏と、ブリュッセル首都圏を除いた北半分を占めるフランダース地域と南半分を占めるワロン地域からなる。
注2:欧州委員会は、持続可能な農業生産を最優先課題としており、その中で農家に環境要件などの強化が見込まれている。概要として、EU環境対策「欧州グリーンディール」などについて報告した「持続可能性(サステナビリティ)を最優先課題とするEU農畜産業の展望〜2019年EU農業アウトルック会議から〜」(畜産の情報2020年3月号)を参考のこと。
【調査情報部 令和2年3月10日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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