欧州各地にて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るっている。フランスのマクロン大統領は3月16日にテレビ演説を行い、翌17日正午から最低15日間は原則的に市民の外出を禁止するとした。演説の中で、「我々は(新型コロナウイルスとの)戦争状態にある」と現在置かれている状況をフランス国民に強調した。ドイツでも近隣諸国との出入国制限が措置されたほか、ベルギーでも18日正午から外出が禁止されるなど、各国で感染拡大を抑制するための動きが続く。
そのような中、欧州委員会のフォン・デア・ライエン欧州委員長は3月16日、感染拡大を抑制するため、原則として、第三国から欧州連合(EU)への不要不急の渡航を30日間禁止する異例の方針を示し、加盟国首脳は17日、この方針に合意した(参考1)。
また、欧州委員会は16日、欧州における急速な感染拡大を背景として、各国が推し進める国境管理措置に関するガイドライン(参考2)をEU加盟国に通知した。これは、食料や医療機器などの不足を防ぎ、EU単一市場を確保したうえでEU市民の健康を守るためのものである。医療従事者などの渡航の必要のある者には適切な処遇を保障し、家畜を含む食品など生活必需品の物資や、乳幼児・高齢者ケア、公益事業などの生活必需サービスの確保を図る。また、特に食品や医薬品、医療機器など必需品の必要性から、当該貨物輸送については優先レーンを導入することなどを加盟国に求めた。
欧州食品安全機関(European Food Safety Authority(EFSA))は3月9日、現時点で、食品がウイルスの感染源または感染経路である可能性を示す証拠はないと報告した(参考3、4)。
EFSA担当者は、「同様の重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群 (MERS)の発生時に、食品を介した感染は確認されておらず、現時点で、今回の新型コロナウイルスがこの点で異なることを示す証拠はない」とした。また、欧州疾病予防管理センター(European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC))によれば、今回のウイルスは人から人への飛沫感染により広がっているとし、世界中の関係者およびEFSA自らも当該ウイルスを監視し続けているものの、食品を介した感染の報告は現時点でないとした。なお、EFSAはイタリア北部のパルマを拠点としており、イタリア政府による移動規制対象地域となっている。
ブリュッセル(ベルギー)のスーパーマーケットの食品棚の様子 (JETROブリュッセル撮影(3月13日))