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米国の大手食肉パッカー、相次ぎ操業停止

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新型コロナウイルスの感染拡大が続く米国において、大手食肉パッカーの操業停止が相次いでいる。

●スミスフィールド社スーフォールズ豚肉処理場

 米国最大の豚肉パッカーであるスミスフィールド社は4月12日、サウスダコタ州スーフォールズにある豚肉処理場の操業停止を発表した。同処理場の豚肉処理能力は1日当たり19,500頭。今後の閉鎖に向け、4月14日に在庫製品の処理を行い、その後は地方自治体、州政府および連邦政府当局の指示があるまでの間、操業が停止される。同社は4月9日、従業員の新型コロナウイルスへの感染が確認されたため、3日間の操業停止を行うと発表していた。
 同社のプレスリリースによると、同処理場は米国最大の豚肉加工施設の1つで、米国の豚肉生産量の4〜5%を占め、3,700名の従業員を雇用し、550戸の養豚家からの出荷を受けているとのことである。また、今後2週間は引き続き従業員に給与を支払うとしている。
 社長兼最高経営責任者(CEO)のケネス・サリバン氏は、「本処理場の閉鎖により、米国内で操業を停止する食肉処理場が増加しつつあることと相まって、米国の食肉供給能力は危険な水準にまで達しつつある。処理場の稼働なくして、食料品店で食肉を購入することはできない。また、サプライチェーンに関連する多くの人々、特に畜産農家に対して深刻な影響を与えることになるだろう」と、今後の食肉需給への影響を懸念するコメントを発出している。

(スミスフィールド社 プレスリリース 2020年4月12日)
https://www.smithfieldfoods.com/press-room/company-news/smithfield-foods-to-close-sioux-falls-sd-plant-indefinitely-amid-covid-19

 なお、現地業界紙によると4月11日、サウスダコタ州知事及びスーフォールズ市長の連名の書簡において、同処理場の従業員238名が新型コロナウイルスに感染し、これは、同処理場の従業員の大半が居住するミネハハ郡の感染者数の54%を占めていることを明らかにしていた。

●JBS USA社グリーリー牛肉処理場

 米国内に60カ所の食肉処理場、調製食料品工場を保有する、米国最大の牛肉パッカーであるJBS USA社は4月14日、コロラド州グリーリーにある牛肉処理場(牛肉処理能力は1日当たり5,400頭)を4月24日まで操業停止することを発表した。同社の操業停止は、ペンシルベニア州サウダートンの牛肉処理場に次ぐ2例目となる。同社はコロラド州で6,000人以上を雇用する最大の企業であり、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の拡大抑制の支援に焦点を合わせた措置であると説明している。
 同社のプレスリリースによると、まず15日から2日間、操業停止に係る準備として、施設内に留まっている食肉製品処理のための最少人員を残しつつ、一時閉鎖を行うとしている。その後、コロラド州公衆衛生・環境局などと協議の上、同処理場の従業員に対し、コロラド州知事による在宅命令を順守するよう勧告する予定だ。なお、処理場閉鎖中も従業員への給与支払いを継続するとしている。
 最高経営責任者(CEO)のアンドレ・ノグエイラ氏は、「グレーリー牛肉処理場は、米国の食料供給及び肉牛生産者にとって極めて重要だが、(処理場が所在する)ウェルド郡でCOVID−19の拡大が続いているため断固とした行動が必要とされている。この地域の先導的一員として、当社は地域の医療従事者を支援し、COVID-19との闘いを先導する最初の企業として、当社のできることを行わなければならないと考えている」と述べている。
 また、同社では他の処理場でも欠勤者が増えているが、過半の処理場は米国民に食料を提供し続けるため、稼働率を高めて操業を続けているとしている。

(JBS社 プレスリリース 2020年4月13日)
https://jbssa.com/about/news/2020/04-13/#.Xpa3h0l7k2w

 なお、現地報道によると、JBS USA社は従業員の感染に関する情報を公開していないが、同処理場の従業員が複数感染し、重症・死亡者も出ているとしており、症状を自覚していた多くの従業員が業務を継続していたことが指摘されている。

●今後の食肉需給への影響が懸念

 上記2社以外にも、タイソンフーズ社、ナショナルフーズ社、カーギル社などの大手パッカーにおいても、従業員の感染や処理場の消毒、清掃などによる処理場の操業停止が行われている。
 現地在住の関係者によると、米国内では外食産業における食肉需要が減少していることや一定の食肉在庫が存在するため、多少の食肉処理場の営業停止では小売のサプライチェーンへの影響は限定的とされている。
 しかし、大手食肉処理場の操業停止期間が長引いた場合や地域差の偏りがみられた場合、食肉処理場から小売店までの物流網に影響が出た場合などにおいてはさらなる混乱が予想されるとのことであり、今後の動向が注目される。
【藤原 琢也 令和2年4月16日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4397