4月14日、NPPCはCOVID-19の影響により生体豚価格が急落し、2020年末までに全体で50億ドル(5400億円)もの損失が生じる可能性に言及し、政府や議会に至急の救済を要求した。
声明では、COVID-19の影響による豚肉処理場の稼働停止と従業員の欠勤の増加が、地方での労働力不足問題に追い打ちをかけるように既存の処理場の生産能力を悪化させ、限られた生産能力によって豚の余剰感が増加し、生体豚の価格が急落していることを指摘している。また、レストランのようなフードサービス市場が崩壊し、COVID-19の影響を受けた多くの輸出市場では都市封鎖によって豚肉需要は激減し、冷蔵倉庫が限界に達していることを指摘した。
また声明では、2020年末までに、豚1頭当たり約37ドル(3996円)、全体で約50億ドル(5400億円)の損失になるとの、アイオワ州立大学のエコノミストであるダーモット・ヘイズ博士と養豚コンサルタント会社カーンズ&アソシエイツ社のエコノミストであるスティーブ・メイヤー博士試算を公表している。COVID-19発生前の業界予測では、2020年は豚1頭当たり平均約10ドル(1080円)の収益が予想されていた。
このような試算を受けて、NPPCは、全米の養豚農家と協議して、連邦政府の政策立案者とともに次のような対応策を提案している。
― 豚肉の在庫を減らし、失業率の上昇により需要が急増しているフードバンクプログラムを支援することにもなるUSDAによる10億ドル(108億円)超の豚肉の購入。この購入分は、レストランやその他のフードサービス用の豚肉製品の需要減少を補う面もある。
― 直接支払い制度に参加している生産者に対する、受給制限のない公平な支払い(注)。
また、NPPCは米国中小企業庁(SBA)が提供する需要の大きい救済資金を利用できないため、約1万戸の家族経営養豚農家が危機に瀕しているとしており、緊急融資プログラムの修正も求めている。
NPPCの会長でありウィスコンシン州ワウゼカの養豚農家でもあるハワード・ロス氏は、「われわれは米国人に高品質の米国産豚肉を提供する努力をしているが、何千もの農家の生計を脅かす悲惨な状況に直面している。私たちは水しか口にしていない。早急な救済措置が講じられなければ、多くの養豚農家が破産することになる。豚肉業界は、必要な時に必要な分だけ生産する体制となっており、(処理されない)豚の行き場は農場以外にどこにもなく、養豚農家は悲惨な選択を迫られている。酪農家は牛乳を、果物や野菜の生産者は農産物を廃棄することができる。しかし、養豚農家には豚を移動させる場所がどこにもない。」と述べている。
(NPPC プレスリリース 2020年4月14日)
https://nppc.org/hog-farmers-face-covid-19-financial-crisis/
(注)
2019年7月25日に公表された、貿易紛争に苦しむ農家の救済策第2弾として措置された市場活性プログラムで申請するも対象外となった養豚農家についても、受給対象とするよう要求するという主旨。
海外情報「貿易紛争の影響に苦しむ農家の救済策第2弾の詳細を発表(米国)2019年8月7日」
https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002494.html 参照