新型コロナウイルス感染症による鶏肉および鶏肉調製品輸出への影響(タイ)
第1四半期の農業分野のGDPはやや低下
タイ農業・協同組合省農業経済局は、2020年第1四半期の農業分野のGDP(国内総生産)を公表した。これによると、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の影響により前年同期比4.8%の低下となり、年間では0.3%の微減を見込んでいる。これは、消毒用アルコール向け需要が増加傾向にあるキャッサバや、中国や東南アジア各国でのASF(アフリカ豚熱)の発生により豚肉の需要が増加傾向にあるためである。一方、外出規制により、外食での消費が比較的多い鶏肉、砂糖の原料であるサトウキビ等の需要が低下傾向にあることが原因としている。
年末や春節(2020年は1月下旬)時期に出身国に帰省していた労働者がタイに戻ってくることができていないため、今後労働者不足に陥ることが懸念されており、タイ飼料生産者協会は、2020年の畜産物生産量は5〜10%程度減少すると見込んでいる。
2020年1〜2月の冷凍鶏肉および鶏肉調製品の日本向け輸出が大幅に増加
タイ商務省国際通商交渉局の発表によると、タイは日本に向けて、冷凍鶏肉および鶏肉調製品を最も多く輸出しているところ、2020年1〜2月の輸出量はそれぞれ、前年同期比37.9%増の2万3000トンと、同5.2%増の4万8000トンであった(表1、2)。これは、日・タイ経済連携協定により関税面で他国産より優位に立っているためであり、両国ともCOVID−19の影響は受けているものの、今後も依然成長の余地はあるとしている。
また、中国向け冷凍鶏肉輸出は、2018年3月の解禁後継続的に輸出量が増加しており、2020年1〜2月の輸出量は同13.1%増の1万3000トンであった(表1)。中国では、ASFの影響で、豚肉の代替として鶏肉の消費が増加している。タイ農業・協同組合省畜産局は、今月に入りタイの鶏肉輸出施設が新たに7施設追加認定されたと公表しており、輸出拡大に向けた動きが見られた。
このように、日本や中国への輸出が堅調であることから、総輸出量は同4.7%増の5万トンとやや増加している。
一方、現地専門家によると、欧州における都市封鎖等の措置により流通が一部制限されたことを受け、2020年1〜2月の英国向け鶏肉調製品輸出は同2.7%減の2万7000トン、オランダ向けは同8.9%減の6000トンとなった(表2)。
また、韓国においても、COVID−19による経済の低迷を受け、同10.4%減の4000トンとかなりの程度減少するなど、輸出の伸び悩みが確認された(表2)。
【寺西 梨衣 令和2年4月24日発】
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