豪州産糖の9割以上を生産するクイーンズランド(QLD)州では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止のために入州規制が行われており、現在、同州の居住者でない者は、国外または他州からの入州を認められていない。例外として、同州に隣接する州の居住者や、医療や物流、農業部門などに携わる労働者などについては、必要事項を満たせば入州することができるものとしている。農業部門の労働者の場合においては、QLD州入州許可証(Queensland Entry Pass)の取得や雇用証明書などの携帯が必要とされ、過去14日間以内に国内外の特定地域に滞在した場合には,14日間の自己隔離が要求されている
(注1)。この入州規制は5月19日まで実施される予定であるが、必要であればさらに延長される可能性もある。
QLD州のサトウキビ生産者団体であるCANEGROWERS
(注2)によると、サトウキビの収穫が見込まれる5月下旬を前に、ニュージーランドや他州から出稼ぎに来るトラック運転手の入州に制限がかかることで、州内で収穫したサトウキビを製糖工場や専用貨物列車
(注3)まで搬入するトラック運転手の不足が懸念されている。同州におけるサトウキビ生産量第1位で約25%を占めるバーデキン地方
(注4)だけでも、最低60名は不足するとみられ、製糖業者や生産者は州内での人材確保に急いでいる。
このような動きは、COVID-19拡大の影響で職を失った州内の労働者に対する新たな就労機会の創出が期待される一方、同州のCOVID-19感染防止対策により、大型トラックの運転免許試験も3月末から3カ月間、業務が停止される予定であることから、今後、トラック運転手への就労を希望する者がいても、免許を取得できず就労できない状況にある。
こうした状況を受け同団体は5月5日、大型トラックの試験であれば、必要に応じ試験時に個人防護具の着用を行うことなどにより試験官と受験者の社会的距離を十分保つことができるとして、可能な限り速やかに運転免許試験を再開するよう、州政府に対し事態の改善を要請した。
(注1)概要は、在ブリスベン日本国総領事館「2020年4月30日付【新型コロナウイルス】クイーンズランド州における入州制限(農業従事者の必要事項等)」を参照されたい。
https://www.brisbane.au.emb-japan.go.jp/downloads/cvirus30042020.pdf
(注2)CANEGROWERSは1934年に設立され、QLD州のサトウキビ生産者の4分の3が加入している。
(注3)QLD州におけるサトウキビの輸送体系は、「外部環境が激変する中で変革期を迎えた豪州の砂糖産業〜生産動向と対日輸出見通しを中心に〜」『砂糖類・でん粉情報』2018年12月号を参照されたい。
https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_001862.html
(注4)豪州砂糖製造業者協議会(ASMC)の統計(2019/20年度〈4月〜翌3月〉)によれば、同地方のサトウキビ生産量は同州の42%。