インド製糖協会(ISMA)は5月18日、2019/20年度(10月〜翌9月)の製糖工場における砂糖の生産状況(5月15日現在)を公表した。
サトウキビの生育の遅れによる糖度低下などによって、砂糖の生産量はインド全体で2647万トン(前年同期比18.9%減〈製品ベース。以下同じ〉)と大幅に減少する中、同国最大の砂糖生産地である北部のウッタル・プラデーシュ(UP)州では1223万トン(同4.7%増)と史上最高を記録した(図)。
これは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大で、サトウキビの流通が変化していることが主な要因である。UP州では、前年度と同程度のサトウキビ生産量が見込まれていたが、3月下旬に実施された都市封鎖
(注1)に伴い、同州に多く点在している「グル」や「カンサリ」
(注2)を生産する工房が軒並み操業を取りやめた影響で、例年よりかなり多くのサトウキビが製糖工場に集まった結果、同州の砂糖生産量が増加したとみられる。本来ならば、5月は多くの製糖工場が製糖期を終える時期であるが、持ち込まれるサトウキビの処理が追いつかず、現在も半数以上の製糖工場が操業を続けている。一部の製糖工場は、6月まで操業が延びる可能性があり、同州の砂糖生産量はさらに増加すると見込まれる。
なお、砂糖生産量第2位のマハラシュトラ州の砂糖生産量は、前年の雨季に大規模な洪水被害に見舞われたことで609万トン(同43.2%減)と半減し、現在1工場のみが稼働している。第3位のカルナータカ州では、4月30日時点ですべての工場が操業を終え、338万トン(同21.8%減)と大幅な減産となり、砂糖生産において最大生産地であるUP州の重要性が増す状況となった。
(注1) インドでは3月25日以降、旅客機の運休、教育機関の閉鎖、商業施設などの営業停止、午後7時から午前7時までの不要不急な外出の禁止などの措置が取られており、5月31日まで実施される予定。国内線旅客機については、25日から段階的な再開を予定。
(注2) グルとは、サトウキビの搾り汁を清浄化した後、オープンパン(釜炊き)で煮詰め、冷やし固めた含みつ糖。カンサリとは、搾り汁を清浄化した後、オープンパンで煮詰め、遠心分離機で精製した分みつ糖。いずれも、家内制工業的に生産されているものがほとんどである。
詳細は「砂糖類・でん粉情報」2020年5月号「インドにおける砂糖の生産動向および余剰在庫解消への取り組み」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002197.html)を参照されたい。