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中国農業展望報告(2020−2029)を発表(乳製品編)(中国)

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 中国農業農村部は2020年4月20日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(2020−2029)」を発表した。同大会は2014年から毎年開催されており、今回は2019年の総括と2029年までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。本稿ではこの中の乳製品について紹介する。

2019年の動向

 生乳生産量は2017年以降、継続して増産となっており、2019年は3305万トンであった。このうち牛による生産量は3201万トンである(表)。
 従来より国内供給不足分を輸入に頼っており、同年の輸入量は前年比12.8%増の297万3400トン(製品ベース)であり、生乳換算すると1660万トンであった。
 また、同年の消費量は同4.9%増の4949万トン(生乳ベース、以下同じ)、1人当たりにすると35.4キログラムであった。中国では生乳は主に常温牛乳やヨーグルトで消費されているが、近年、コールドチェーンの普及により冷蔵商品も拡大している。粉乳類の消費は引き続き堅調で、チーズは子供向けを中心に定着した。

2020年の動向予測

 2020年の生乳生産量は、前年比2.6%増の3390万トンと予測している。新型コロナウイルス感染症(COVIDー19)により、飼料の搬入や生乳出荷の制限、搾乳牛の早期乾乳や淘汰、これらを背景とした運転資金等の回収や負債の増加など、短期的な影響はあったものの、年間生産量は引き続き増加すると見込んでいる。
 輸入量は、同3.3%増の1715万トンと予測している。COVID−19により国際的な物流が制限されたことや国内の乳製品流通が一時的に制限されて消費が落ち込んだことから、国内の粉乳類の在庫が増加しており、一部の乳製品輸入は一時的に減少した。しかしながら、米中経済貿易協定の第一弾の合意や、各経済連携協定により、NZや豪州からの輸入関税が引き下げられること、国産品より輸入品価格が安価であることから、年間輸入量は増加すると見込んでいる。
 乳製品の流通も一時的に影響を受けたものの、依然として健康志向は高まっているため、消費量は5090万トンまで拡大すると分析している。

2029年までの動向予測

 生乳生産量は緩やかに増加し、2029年は4300万トンと現状の1.3倍程度まで増加すると予測している。
 輸入量も緩やかに増加し、2029年は2305万トンとしている。前述の各経済連携協定による輸入関税の引き下げに加え、EUとの地理的表示(GI)の保護を相互に認める二国間協定の妥結(注1)、一帯一路政策により輸入先国は多様化し、全ての製品で輸入量は増加するが、ペースは減速すると見込んでいる。
 消費量は、今後、農村部を中心に消費の増加が見込まれるため、6596万トンと予測している。これは、中国の乳業関係団体が、1日300グラムの乳製品を摂取するよう指導しており(注2)、この政策により消費量の増加は加速すると見込んでいる。
なお、COVIDー19が、生産、価格、輸出入及び消費に与える影響は、それぞれ不確実であるとしている。

(注1)EUとの地理的表示(GI)の保護を相互に認める二国間協定については、海外情報「EUと中国、100品目ずつ地理的表示(GI)を相互保護することで妥協」を参照されたい。
(注2)中国乳業協会、中国乳製品工業協会、全国衛生産業企業管理協会、中国栄養学会が合同で、2020年2月26日に「中国国民の乳・乳製品消費指導」」を発表した。これによると、1人当たり毎日300グラムの飲用乳又はヨーグルトや、これらに相当する乳製品を摂取するよう指導している。なお、2019年の中国国民の1日当たり乳・乳製品摂取量は97グラムである。
表 乳製品の需給動向と展望
【寺西 梨衣 令和2年5月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9534