中国農業展望報告(2020−2029)を発表(砂糖編)(中国)
最終更新日:2020年6月4日
中国農業農村部は2020年4月20日、中国農業展望大会を開催し、今後10年間の農業を展望する「中国農業展望報告(2020−2029)」を発表した。同大会は2014年から毎年開催されており、今回は、2019年の総括と2029年度までの農畜水産物の生産量や消費量の見通しが報告された。
本稿では、2018/19年度における砂糖の需給動向ならびに2019/20年度および2028/29年度までの需給見通しについて紹介する。なお、各砂糖年度は10月〜翌9月である。
2018/19年度の動向
糖料作物(サトウキビおよびてん菜)の栽培面積は、サトウキビが約121万ヘクタール、てん菜が約23万ヘクタールとなったことから、合計144万ヘクタール(前年度比4.7%増)とやや増加した。砂糖生産量は、同4.4%増の1076万トンと、3年連続で増加した。消費量は、同0.7%増の1520万トンとわずかに増加した。輸入量は324万トン(同33.3%増)と大幅に増加した。
2019/20年度の動向予測
主なサトウキビ産地である雲南省と広東省で、製糖工場の経営不振などを背景に他作物への転作が進むことで、糖料作物の栽培面積は142万ヘクタール(前年度比1.2%減)とわずかな減少が見込まれる。砂糖生産量を見ると、てん菜生産量は平年通りであるものの、2019年に主産地である広西チワン族自治区や雲南省で干ばつや冷害が発生した影響によるサトウキビ生産量の減少を見込み、全体で同2.4%減の1050万トンと予測されている。新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の発生により、春節後にサトウキビの収穫や輸送、製糖工場での圧搾が滞ったことも砂糖の減産要因となる可能性がある
(注1)。
消費量は前年度と同様、1520万トンと見込まれる。前年度の輸入量が多かったことから、輸入量は304万トン(前年度比6.2%減)と減少が見込まれるものの、2020年5月22日をもって関税割当枠外の輸入糖に課されていた追加関税の期限が切れる
(注2)ことで、輸入糖の価格が下がり、国内の砂糖産業への影響がさらに強まると予測されている。
(注1)2020年2月21日付海外情報「中国雲南省、新型コロナウイルスが砂糖生産にも影響を与え始める(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002627.html)を参照されたい。
(注2)中国は2017年5月、砂糖の輸入品が国内産業に損害を及ぼしているとして「セーフガード措置」を発動し、割当枠外の輸入関税を50%から95%に引き上げた。詳細は、2018年10月24日付海外情報「中国による砂糖への追加関税をめぐり、ブラジルがWTOへ提訴(中国)」(https://alic.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002314.html)を参照されたい。
2028/29年度までの動向予測
今後約10年間で、都市化による農地の減少や、他作物との競合が激化する可能性があるものの、機械化の進展や栽培技術の向上により、糖料作物の単収の増加が見込まれるとしている。このため、砂糖生産量は2019/20年から2028/29年度にかけて年間1.8%の割合で増加し、2028/29年度には1211万トンに達すると予測されている。
消費量については、人口増加や都市化の進展が消費量の増加に貢献するとみられるものの、高齢化社会を背景とした嗜好の変化や健康志向の高まりによる代替甘味料の需要増加などにより、今後約10年間の消費量の増加率は緩やかになるものと見込んでいる。2019/20年から2028/29年度における砂糖消費量の年間増加率は0.9%で、2028/29年度の消費量は1652万トンと見込まれる。
輸入量は、国内消費量が生産量を上回って推移することや、輸入糖の価格競争力の持続が見込まれるところ、2019/20年から2028/29年度にかけて年間9.3%の割合で増加すると予測されている。2028/29年度の輸入量は644万トンと、2018/19年度と比較して約2倍に増加すると見込まれる。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4396