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EU農産物・食品飲料団体ら、英EU・FTA交渉が難航していることにリスクが高まっていると懸念を表明。「合意なし」の場合、移行期間の延長、代替案の措置を要求

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 欧州連合(EU)最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(COPA-COGECA)(注1)、欧州食品飲料産業連盟(Food Drink Europe)(注2)、欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)(注3)の三者は連名で6月4日、英国とEUの第4回交渉終了を前に、これまでの3回の交渉で進展がなかったこと、また、移行期間終了の2020年12月31日までに合意が得られないリスクが高まっているとして懸念を表明した。

 三者はプレスリリースの中で、EUの対英国農産物・食品貿易額は、2019年に580億ユーロ(7兆2500億円:1ユーロ=125円)に達しており、関税及び割当数量のない自由貿易協定(FTA)の締結に失敗すれば、EUと英国双方の農産物・食品部門に深刻な影響を及ぼすことになるとした。また、関税導入に加えて関連規制の相違が伴えば、サプライチェーンに著しい混乱を招くとした。

 三者は、双方の混乱を限定的にすることに焦点を当てるとし、具体的には、将来のEUと英国の貿易協定において、次のことを確保することが不可欠であるとした。
 ● 関税、手数料や課徴金、割当数量を導入しないこと。
 ● EUと英国間の公平な競争条件の確保。EUおよび英国の事業者間の公正な競争を確保するために不可欠なものである
 ● 衛生植物検疫(SPS)措置および規格基準に関する高度な協力に加え、その適用の相違を最小限に抑えること。さらに、欧州食品安全機関(EFSA)および英国食品基準庁(FSA)の緊密な関係維持が最も重要である。
 ● 税関審査と事業上手続きの負担を軽減するための税関協力
 ● EUおよび英国の事業者のみを優遇しうる効果的な原産地規則
 ● EU単一市場の一貫性を保持するため、アイルランド・北アイルランドに関する協定が確実に実施されること。
 ● 将来にわたるEUおよび英国の地理的表示(GI)の相互保護

 また、現在は2020年末までの移行期間にあるが、特に貿易協定の締結および批准までの時間が限られていることを懸念し、英国政府が移行期間延長に反対していることに遺憾を示すとともに、移行期間は、事業者らの混乱を回避するため十分な長さを確保すべきであるとした。

 そして、移行期間内に FTA 締結ができない場合に備えて、2021年頭から実施することが可能な、代替案の検討を強く要求するとした。関税と割当数量のない自由貿易を維持する必要があるとし、それが、すでに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による重大な影響に対応している事業者らの混乱を最小限に抑えながら、交渉担当者たちにさらなる時間を与えることになるであろうとした。

 三者はプレスリリースの最後で、合意が得られず、移行期間の延長もされない場合、EUの農産物・食品部門にとって、EUから英国への輸出量の大幅な減少、収入の大幅な減少、そして、結果的には雇用の喪失という深刻な問題が起こるであろうとした。また、その影響は、中小企業、生産者、農業協同組合へ特に大きなものになるとし、移行期間の延長有無の判断も含むこれまでの交渉の進捗評価のために、6月中に予定されている首脳級会合の中で今回の懸念が考慮され、交渉プロセスが迅速かつ建設的な方法で進むことを期待しているとした。また、野心的で高いレベルの合意に向け、英国とEUの双方に対し、公平な競争条件を確保し、双方にとって最善の結果をもたらす質の高い成果を達成するための十分な時間を確保することを強く勧奨するとした。

 EU離脱協定では本年6月末までの間、双方の合意により1回に限り1年から2年、移行期間を延長することができる。欧州委員会のミシェル・バルニエ首席交渉官は6月5日、ビデオ会議で行われた今回の交渉を終え、移行期間延長に反対する英国の立場に言及した上で、批准手続きにかかる時間を考慮すれば、本年10月末までに最終合意に達しなければならないとし、移行期間の1年ないし2年の延長の「扉は開かれている」とするEU側の立場を繰り返した。また、交渉における英国の立場が、「公平な競争条件の確保」、「マネーロンダリングおよびテロ活動への資金供与への対策」、「漁業」などの点において、2019年10月に両者が合意した政治宣言の内容に合致していない点を強く指摘し、これらが主要な論点であると述べている。

(注1)欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(COPA-COGECA)とは、EU加盟国の2300万人以上の農業生産者によって構成されるCopa(欧州農業組織委員会)および2万2000の農業共同組合により構成されるCogeca(欧州農業協同組合委員会)により組織されたEU最大の農業生産者団体。CopaおよびCogecaは、独立した組織であるものの、両者は共同で事務局を設置し、主にロビー活動を行っている。

(注2)欧州食品飲料産業連盟(Food Drink Europe)とは、EU加盟国の29万4000社の事業者と470万人の労働者で構成されるEU最大の食品製造業団体。取引量はEU全農産物の70%を占める。

(注3)欧州農産品貿易連絡委員会(CELCAA)とは、EU加盟国の3万5000社の農産物貿易事業者で構成されるEU団体。穀物、飼料、砂糖、ワイン、食肉、乳製品、青果物、卵、香辛料、切り花などの農産物を対象としている。
【国際調査グループ 令和2年6月11日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527