ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)
(注1)によると、中国政府は2020年5月21日まで有効とされていた、輸入糖の追加関税の対象期間を延長しないことを決定した。
中国では、輸入糖について関税割当を設けており、年間195万トンの関税割当枠分には15%の関税が課せられ、割当枠外の関税は50%となっていた。しかし、中国政府は2017年5月、砂糖の輸入品が国内の砂糖産業に損害を及ぼしているとして「セーフガード措置」を発動し、割当枠外の関税50%に追加関税45%を上乗せし、合計95%まで引き上げる措置を講じた
(注2)。
砂糖輸出量世界第1位のブラジルにとって、中国は主要な砂糖輸出相手国であり、近年の輸出額は年間10億米ドル(1090億円
(注3))前後で推移していた(図)。しかし、中国における輸入糖の関税が引き上げられた影響で、2017年の中国向け輸出額は前年と比べ約84%も減少した。ブラジル政府は中国政府に対し、関税引き上げによる貿易収支の不均衡の是正策を要請したが、折り合いがつかず、2018年10月、中国政府の措置について世界貿易機関(WTO)に提起した。UNICAによると、その後両国は2国間協議を行ってきたが、中国政府が追加関税の期間を延長しない方針に合意したため、ブラジル政府はパネル設置の要請を取り下げることとしたという。追加関税の期限が切れたことで、割当枠外の輸入関税は50%に戻る。
中国国内の製糖協会7団体は5月上旬、輸入糖への追加関税を撤廃しないよう中国政府に要請していたが、中国政府は製糖協会の要望に応じることはなかった。国内の業界関係者は、今回の決定によって国産糖が輸入糖と競合できない状況に追い込まれ、国内の砂糖産業は大きな打撃を受ける可能性があると、悲観的な見解を示している。
一方UNICAは、中国政府の決定に歓迎の意を表明し、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がブラジル国内の砂糖市場に影響を及ぼしている
(注4)中、海外への輸出販路を拡大する機会を得た」とコメントした。
(注1)ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める、中南部地域を管轄区域とする業界団体。
(注2)追加関税は1年ごとに5ポイントずつ引き下げられ、2018年5月には40%(合計90%)、2019年5月には35%(同85%)となっていた。
(注3)為替換算に当たっては、1米ドル=109(108.53)円(2020年5月末時点)とした。
(注4)COVID−19がブラジル国内の砂糖市場に及ぼす影響については、2020年5月1日付海外情報「ブラジルの製糖業者が政府に支援を求める、現状では操業停止の恐れも」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002690.html)を参照されたい。