英国農業園芸開発公社(AHDB:Agriculture and Horticulture Development Board)は6月5日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による影響として、同国で実施された都市封鎖(ロックダウン)の影響を含む消費動向の調査結果をホームページ上で公表した。
調査は英国調査会社YouGov社と共同で4月に実施したものである。なお、英国のロックダウンは3月23日から実施され、5月以降徐々に緩和されている。
<消費者行動・料理習慣の変化>
家で過ごす時間が増えたことで、家庭で食事をする機会が増えた。家庭で料理を楽しむ人の割合は、ロックダウン前(72%)と増減はないものの、全体の回答者のうち27%が以前よりも食材を「一から料理する」ようになったと答えた一方、出来合いの食事を持ち帰る(take away)ことが減ったとする回答者は48%に上った。「一から料理する」機会の増加は、汎用性の高い牛ひき肉や鶏むね肉などの利用拡大につながり、調査期間の牛ひき肉販売量は前年比36%増、鶏むね肉は同33%増であった。
<価格・品質>
価格に対する消費者意識は、食費を抑えているとした者とそうではない者が同じ3分の1程度となり、コロナ禍による様々な影響から2極化も見られているという。一方、外食については、他者との接触の回避や家計が厳しくなった影響を受けており、3分の1以上が節約のために外食を減らしたとしており、その中でも高価格帯のレストランを利用していた者は外食をやめて、高価格帯の食品を小売店で購入するようになった一方、食費を削減する目的で外食を減らしたとする回答者はより小売店から廉価な価格帯の食品を購入しているとされている。
<健康面>
一般的に、消費者の意識が価格などに向けられる場合、健康の優先順位は低いものになる傾向にあり、健康に良いとされる食品の摂取を減らすこともあり得る。しかしながら、ロックダウンによって体を動かす機会が減少していることから、食品を通して健康維持を求める傾向があるという。調査によれば、インターネットで健康的という言葉とともに、レシピを検索する件数はロックダウン期間中である4月において、増加が見られたという。
<食肉、乳製品、ばれいしょ>(注)
ロックダウンにより買い物回数が減少したことから、食肉、乳製品、ばれいしょの購入に当たって、消費期限などの重要性が増している。ロックダウン下での購入に当たり重視した点は、食肉に関しては、消費期限などが41%、価格が25%、容量が21%、乳製品に関しては、消費期限などが36%、容量が17%、価格が16%、ばれいしょに関しては、消費期限などが33%、英国産または地元産であることが19%、容量が18%であった。
AHDBは、ロックダウンの実施以降わずか2カ月の間で、英国の消費動向は大きく変化し、その影響は、ロックダウンが緩和していく中にあっても、大きく残るものと考えている。小売業にあっては、ロックダウンが緩和されていく中、変化する消費者ニーズへの適応が重要であるとしている。
(注)AHDBの業務対象品目