豚肉の最恵国関税を引き下げへ(ベトナム)
ベトナム政府は6月2日、豚肉の最恵国税率の引き下げを発表した。これにより、2020年7月10日から、冷凍豚肉は15%から10%に、冷蔵豚肉は25%から22%となる。なお、この関税率は同年末まで適用される(表1)。
ベトナムの主な輸入先国であり、包括的および先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)参加国でもあるカナダの税率は、冷凍豚肉が9.3%となっている。また、同じく主要輸入先であるEUについては、同年6月8日にベトナムEU・自由貿易協定の批准議決案がベトナム国会で可決されており、協定が発効すればCPTPP参加国と同様の関税率となる見込みである。このことから、米国食肉輸出連合会(USMEF)は、自由貿易協定を締結していない米国の税率は、カナダなどCPTPP参加国と遜色ないものになり、冷凍内臓肉の税率が8%のままであること、ベトナムEU・自由貿易協定がいつ発効するかは分からないといった要素はあるものの差し当たり、輸出者が一つの土俵で競うことになる旨指摘している。
ベトナムでは、ASF(アフリカ豚熱)の発生により養豚業が深刻な影響を受けており、米国農務省(USDA)は、2019年の豚肉生産量は前年比15.3%、2020年はさらに同5%以上減少すると推計している(表2)。また、報道によると、ベトナム農業農村開発省は、2020年の現在までの豚肉供給量は前年同期より約17%減少と発表した。
2030年に向けた同国の畜産開発戦略によれば、豚肉消費需要を満たすためには250〜300万頭の繁殖雌豚、飼養頭数にすると2900〜3000万頭を安定して維持する必要があるとし、政府は、繁殖雌豚の増頭のために7兆ベトナムドン(以下「VND」という。329億円、1ベトナムドン=0.0047円)の支援を決定しており、すでに5兆VND(235億円)を支出している。
また、国内供給の不足分を補うため、豚肉の輸入量は増加しており、USDAによれば、2019年の輸入量は前年比2.5倍の5万トンと推計されている。しかしながら、不足分を補うほどにはなく、生体豚と豚肉の価格は最高値を更新し続けている。
USMEFは、ベトナム政府が関税率の引き下げなどによりさらに輸入を増やし、豚肉価格を安定させることを期待していると分析している。
(参考1)ベトナムの豚肉需給動向については、「畜産の情報」2017年2月号「ベトナムの豚肉需給の現状と課題」を参照されたい。
(参考2)カナダ産豚肉のベトナムへの輸出動向は、「畜産の情報」2020年6月号海外需給「1〜2月のベトナム向け豚肉輸出量、大幅増で韓国向けを上回る」を参照されたい。
【寺西 梨衣 令和2年6月17日発】
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