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2020/21年度の砂糖生産・輸出、ともに微減の見通し(豪州)

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最終更新日:2020年7月3日

 豪州農業資源経済科学局(ABARES)は6月16日、2020/21年度(7月〜翌6月)の豪州における砂糖生産量および輸出量などの見通しを公表した。

新型コロナウイルス感染症の砂糖産業への影響と対応

 ABARESによると、現状、豪州の製糖工場では新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)の感染拡大防止のため、衛生基準や社会的距離などを遵守して円滑に操業しており、砂糖生産や物流、輸出などにおいて大きな混乱は確認されていないとしている。全国農業者連盟(NFF)やクイーンズランド(QLD)州食品安全生産局(Safe Food Production Queensland)などは、労働環境におけるCOVID‐19の感染防止のための取組指針や実行チェックリストを策定し、従業員の体調管理のほか、従業員間の作業間隔の設定(最低1.5メートル)、手指や農機具などの消毒や防護服の着用の徹底などを行うよう求め、関係業界の感染拡大防止に努めている。

サトウキビは増産するも、砂糖生産量は微減を見込む

 2020/21年度における豪州のサトウキビ生産量は、前年度からわずかに増加し約3200万トンと見込まれている。これは、QLD州南部においては、サトウキビ栽培面積の減少や単収の低迷によりサトウキビ生産量が伸び悩む一方、同州中部および北部で2020年の晩夏から初秋にかけて降雨に恵まれたことでサトウキビの単収が増加し、南部の低迷を補い余る状況が見込まれるためであるとしている。しかしながら、可製糖率(CCS)(注)は高水準を記録した前年度から低下し、サトウキビ生産量の増加を打ち消すため、砂糖生産量は前年度比2.7%減の440万トン(粗糖換算、以下同じ)と、わずかな減少が見込まれる(表)。

(注)サトウキビのショ糖含有率、繊維含有率および搾汁液の純度から算出される回収可能な糖分の割合。

砂糖輸出量も微減を見込むも、COVID‐19の再流行を懸念

 2020/21年度における豪州の砂糖輸出量は、前年度からわずかに減少し375万トン (前年度比1.6%減)と見込まれている。これは、豪州の主な砂糖輸出先国である韓国や日本、中国でCOVID‐19の流行第1波を乗り越えて段階的に経済活動を再開していることから、他国と比べて砂糖需要の回復が早いとの見通しによるものである。また、7月に包括的経済連携協定が発効し豪州産砂糖の関税率が引き下げられる予定のインドネシアでも、サトウキビの減産に伴う砂糖生産量の減少により輸入糖の需要が高まると見込んでいる(注)。しかし、ABARESは、豪州の砂糖輸出における大きなリスクの一つとして、主要輸出先国を含めたアジア諸国におけるCOVID‐19の再流行を挙げており、COVID‐19が各国の砂糖需給に与える影響について、今後も注視する必要があるとしている。

(注)インドネシアとの包括的経済連携協定については、「砂糖類・でん粉情報」2020年6月号「砂糖の国際需給・需給レポート 4. 日本の主要輸入先国の動向(2020年5月時点予測) 豪州 インドネシアとの包括的経済連携協定、7月に発効」(https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_002229.html)を参照されたい。

砂糖輸出額は、豪ドル安効果及ばず大幅減を見込む

 ABARESは、2017年末以降米ドルに対し弱含み傾向にある豪ドルが2020年から2021年にかけても同様の傾向で推移すると予測している。砂糖は米ドル建てで取引されるため、豪ドル安になると豪州産の価格優位性が保たれ、砂糖輸出額の増加に寄与するものの、低迷が続く砂糖の国際価格による減少を補うことはできず、砂糖輸出額は13億7900万豪ドル(約1046億(注)前年度比17.9%減)と大幅な減少が見込まれている。

(注)為替レートは1豪ドル=75.88円(2020年6月末TTS相場)を使用した。
表 ABARESによる豪州の砂糖生産量・輸出量の見通し
【塩原百合子 令和2年7月3日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9806