米国農務省による世界のトウモロコシ・大豆需給予測(2020年8月)
2020/21年度の世界トウモロコシ生産量、米国などを中心に上方修正
米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は2020年8月12日、「Grain:World Markets and Trade」において、2020/21年度の世界のトウモロコシ需給予測値を更新した。
これによると、2020/21年度の世界のトウモロコシ生産量は、前回下方修正された米国が単収の増加により前回より706万トン、また、ウクライナが良好な気候の下、収穫面積および単収の増加により50万トン上方修正されるなど全体で782万トン上方修正され、前年度比5.3%増の11億7103万トンと見込まれている(表1)。国別で見ると、米国は、同12.2%増とかなり大きく増加し豊作となるとともに、ブラジル(同5.9%増)、ウクライナ(同10.1%増)も、記録的に大きな生産量になる。
輸出量は、米国が生産量の増加に加え、中国向けを中心とした輸出の前倒しや価格競争力の改善により150万トン、また、ウクライナも生産量の増加により50万トン上方修正されるなど全体で180万トン上方修正され、同5.2%増の1億8464万トンと見込まれている。一方、輸入量は、EUが飼料用大麦および小麦などの飼料穀物の減少による代替として200万トン上方修正された。
消費量は、EUが他の飼料作物からの代替需要が増加し前回より200万トン、米国が飼料等向けにおいて190万トンそれぞれ上方修正されるなど全体で475万トン上方修正され、同3.9%増の11億6487万トンと見込まれている。
期末在庫は、生産量が増加する米国などが上方修正されるなど、全体で242万トン上方修正され、同2.0%増の3億1746万トンとわずかに増加すると見込まれている。
2020/21年度の世界の大豆生産量、米国などを中心に上方修正
USDA/FASは2020年8月12日、「Oilseeds:World Markets and Trade」において、2020/21年度の世界の大豆需給予測値を更新した。
これによると、2020/21年度の世界の大豆生産量は、米国が単収の増加により前回より789万トン上方修正されるなど全体で788万トン上方修正され、前年度比9.8%増の3億7040万トンとかなりの程度増加すると見込まれている(表2)。国別で見ると、米国は、悪天候により低調であった2019/20年度から作付面積、単収とも回復し同24.6%増と大幅に増加する。また主産国であるブラジルは、同4.0%増と2年連続で増加する。
輸出量は、生産量の増加と中国からの強い需要を背景として、米国、ブラジル、アルゼンチンなど全体で前回より391万トン上方修正され、同0.5%増の1億6549万トンと見込まれている。国別の前年度比では、ブラジルやアルゼンチンが下回る一方、米国が同28.8%増と大幅に上回る。輸入量は、大豆かす消費の増加により搾油仕向け需要が増加する中国が300万トン上方修正されるなど全体で447万トン上方修正され、同0.1%増の1億6249万トンと見込まれている。なお、2019/20年度(推計値)において、ブラジルの輸出量が450万トン前回に続き上方修正される一方、相手先である中国の輸入量が200万トンなど前回に続き上方修正された。
消費量(搾油仕向け)は、ASF(アフリカ豚熱)からの回復により豚飼養頭数が増加し需要の強い中国のほか米国などが全体で451万トン上方修正され、同3.9%増の3億2008万トンと見込まれている。
期末在庫は、生産量が増加した米国が上方修正される一方、2019/20年度(推計値)から繰り越される在庫が減少するブラジルが下方修正され全体で28万トン上方修正され、同0.5%減の9536万トンと見込まれている。
2020/21年度の米国トウモロコシ生産量、過去最高をわずかに上回る見込み
米国農務省世界農業観測ボード(USDA/WAOB)は2020年8月12日、2020/21年度(9月〜翌8月)の米国の主要農作物需給予測値を更新した。このうち、米国のトウモロコシ需給見通しは、次の通りである。
生産量は、単収が1エーカー当たり181.8ブッシェル(4.6トン(注))と前回より1エーカー当たり3.3ブッシェル(0.1トン)上方修正されため、2億7800万ブッシェル(706万トン)上方修正され、前年度比12.2%増の152億7800万ブッシェル(3億8808万トン)とかなりの大きい増加が見込まれている(表3)。これは、これまでの統計で最も大きかった2016/17年度の151億4800万ブッシェル(3億8477万トン)をわずかに上回る。
消費量は、生産量が上方修正されたことや価格低下が見込まれることから飼料等向けを中心に7500万ブッシェル(191万トン)上方修正され、同5.8%増の125億5000万ブッシェル(3億1878万トン)と見込まれている。
輸出量は、米国産トウモロコシの競争力が高まったことや国際市場価格が比較的低いことから前回より7500万ブッシェル(191万トン)上方修正され、同24.0%増の22億2500万ブッシェル(5652万トン)と大幅な増加が見込まれている。
期末在庫は、生産量が上方修正されるなど総供給量が総消費量を上回ることから前回より1億800万ブッシェル(274万トン)上方修正され、同23.7%増の27億5600万ブッシェル(7001万トン)と大幅な増加が見込まれている。この結果、期末在庫率(総消費量に対する期末在庫量)は、18.7%と前年度から2.4ポイント増加すると見込まれている。
また、生産者平均販売価格は、1ブッシェル当たり3.10米ドル(1キログラム当たり12.9円:1米ドル=106円)と前回より0.25米ドル(同1.0円)低下すると見込まれている。
なお、8月上旬に、主産地であるアイオワ州、ウィスコンシン州、イリノイ州およびネブラスカ州が暴風により被災したとの報道がなされているが、今回の予測値には反映されていないとのことである。
(注)1ブッシェルを25.401キログラムとしてALICが換算。
【井田 俊二 令和2年8月25日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 国際調査グループ (担当:井田 俊二)
Tel:03-3583-9532